実説 城谷怪談
老若男女皆が楽しめる怪談語りを目指し、落語や講談にも似た独特な語り節、ノスタルジックな世界観に定評がある城谷歩による怪談。
幼い頃から自身でも不思議な怪体験を数多く持ち、更に聞き集めた種々の実体験を含めるとその数は数百にも及ぶ。
そうした現代の実話怪談、奇談の中から選りすぐりをお届けする。
内容紹介
「行かなきゃ」(34分)
サクさんという女性が三十代半ばのころに体験した出来事。 その時期少し精神的に不安定になっていたサクさんはアルバイトを辞め、実家に帰って静養していた。 ある日の朝、母親が買い物に出かけた後は家の中に一人だったそうだが、小雨が降ったりやんだりする曇天の空を窓越しに見上げながら、布団から起き上がるのも億劫でボーっとしていた。するとどこからともなく男の声が聞こえてきた。 『おいで……お嫁さんにしてあげるから……海で待ってるから』はっきりとサクさんに呼びかけてくるのだが、正体は見えず。 不安定な精神状態が聞かせる幻聴ではないことがやがて明らかになっていく。
「蟲」(22分)
病院には死神がよく現ると聞く。大抵は黒い影や、靄のような形で死期の近い患者さんのベッドの足元や枕元に姿を現すのを医療従事者や、他の患者さんが目にするという。 今回の体験談を寄せてくれた女性の場合は少し様子が違うようだ。三年前のこと、母親が北九州市の総合病院の六人部屋に入院していたそうだが、ある日息子と二人で老齢の母親を見舞いに行くと、室内には母親のほかに二人やはり高齢のお婆さんが二人入院していた。一人はおしゃべり好き、もう一人は静かに眠っていた。 するとおしゃべり好きのお婆さんが、寝ているお婆さんのベッドの上の天井の隅を指差し「黒い虫がたくさん出てくるのは何かしら」と言い出した。無論、虫など湧いていないのに……。
「笑う女と父の霊」(29分)
人は誰しも男性性と女性性の両方を持ち合わせているようだ。肉体的には男性であっても無自覚に女性的な感性が際立っていたり、その逆があったりと……。 二十七歳の綾さんのご両親はもともとあまり夫婦仲が良くなかったそうだが父親が重度の脳梗塞を患ったのをきっかけに離婚することになった。離婚の手続きは存外大変で、下半身不随の後遺症が残った父の代わりに綾さんが色々奔走していたのはつい先ごろの事だ。 自身の子育てと両親の手続きで目まぐるしい日々を送る中で、綾さんは奇妙な夢を見た。 見たことの無い和室で胡坐をかいて本を読んでいると目の前の襖が開いて、隙間から見知らぬ女がこちらを見てニタリと笑うのだ。
「とぐろ」(36分)
日本には様々な宗教や信仰、信心があるがもしかするとそんな信心が関わってくるかもしれない体験談である。 時は1970年代初頭、体験談を寄せてくれた女性の母親が当事者である。そのころ母親(みちこさん)は京都の片田舎に仕事を見つけ新生活を始めたばかりの二十代前半。 慣れない生活の中で近所に住むお婆さんがよく面倒を見てくれたそうだ。口は悪いが、親切で情に篤い人で日課は近くの山中に祭ってある蛇神様を朝夕欠かさずお参りすることだった。 いつまでも元気だと思っていたお婆さんだが寄る年波にはかなわず、患って町の病院に入院してしまう。 お見舞いに行ったみちこさんはそこで想像を絶する状況にあれよあれよと巻き込まれていってしまうことに。
城谷 歩(しろたに わたる) プロフィール
1980年2月16日生 北海道小樽市出身
15歳から舞台演劇を中心に俳優活動を始める。
その後、劇団深想逢嘘(2000年〜2011年)を発足、主宰を務める。
様々な職種を経て2012年1月怪談師デビュー。怪談ライブバー スリラーナイト札幌本店で活動後、2014年から同六本木店オープンに合わせ上京。
外部出演、独演会開催、メディアへの出演多数。
2018年独立。公演情報などはHPにて。
http://shirotani-kwaidan.com
■メディア
・「所さんの目が点」
・「大人養成所バナナスクール」
・「Rの法則」
・「柴田阿弥の金曜thenight」
他多数
■書籍
・恐怖怪談「呪ノ宴」(竹書房 単著)
・怪談師恐ろし噺「裂け目」(竹書房 単著)
■DVD
・「怪奇蒐集者」(楽創舎)
・「六本木怪談 呪・祟」(楽創舎)
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