内容紹介
安岡教学の集大成
ここに極まれり!
人間の意識の深層(無意識層)は永遠につながっている。これは自分および父母・先祖代々の体験と真理の倉庫であり、秘密の蔵である。
このことを近代の医学・心理学がようやく究明するようになってきた。王陽明のいわゆる「良知(りょうち)」というのは、このことをいうのであって、我われが主観を徹底してゆくと(徹底的に思索すると)、良知に到達する。これは言い換えれば大いなる客観(いわば真理)である。だから、我われは主観を徹底すれば大いなる客観に到達する。客観を徹底すれば大いなる主観に到達する。これを王陽明は龍場(りゅうじょう)という僻地に流謫(るたく)された時に初めて把握した。そこで、真剣に学問求道をやれば、誰でもこの主観を通じて大いなる客観に到達する、つまり主客が合一してくる。――これが「到良知(ちりょうち)<良知を究める>」というもので、禅とも通ずる、陽明学の一眼目である。
収録内容
第一章 五家七宗――禅の発展
南頓北漸/五家七宗/偶像は拝せず
不惜身命・但惜身命/焼身供養/法華経提婆達多品
●山霊祐/仰山慧寂/黄檗希運/黄檗希運の宗風
臨済義玄/臨済の六通/臨済の四料簡/薬山惟儼
洞山の「三滲漏」/洞山の「三路」/洞山の「五位」/曹山本寂
寒山拾得/豊干/寺田日円尼/坐脱・立亡/火定
第二章 宋学の勃興
唐の滅亡/宗教と道徳/宗教の本質/浄土門と聖道門
日蓮念佛/甘えやすい宗教/宗教の陥穽/趙宗の始まり
儒佛の交流/陳摶と?放/儒佛兼道の明教大師/碧巌録
儒者に情眼/周茂叔と易学/静の哲学/邵康節
程明道と程伊川/張横渠/司馬光/劉元城/范仲淹/欧陽脩
真の教養とは/宋の派閥闘争/王安石の革新政治
第三章 易の哲学――周茂叔と太極図説
易学の普及/太極図説/無極にして太極
動、中して静/静極まって復た動/統計に基づく推計学
二気五行論/四柱推命/科学と易学の接近
通書/誠と幾/道徳の源/天人合一の学問
第四章 漢民族と日本民族
主客一如/悪に対応する道/弱肉強食の境地/復讐的精神
宗教的態度/ガンディズム/偽善的精神/尚武的精神
甘い日本、苛烈な中国/没法子/やり直しだ/功過格
中国の民族哲学/恐るべき「生」の哲学/中国人の友誼友情/義兄弟
天性の人間観察力/生きることに忠恕/柔にして老/老獪佞奸
日本人の特質/古神道の精神/他力本願/伝統的民族性
第五章 宋の試練――文華と文弱
宋の建国/篤実な趙匡胤/論語宰相・趙普/流水型とダム型
王船山/趙匡胤政治の六徳/中国政治の三原理
宋史の眼目/右文左武/将軍連が軍権返上/宋の文弱化
コンプロマイザー/宋の黔驢外交/漢民族の試練
蒙古民族の欧亜席捲/耶律楚材/オゴタイ/漢民族とスラブ民族
第六章 碧巌録
祖師禅/「禅宗」の成立/儒教の影響
雪竇重顕/圜悟克勤/張商英
維摩経/平和論者・秦檜/大慧宗杲
碧巌録の歪曲/虎と禅僧/坐脱・立亡
野狐禅、迎合禅/公案/不識の公案
独坐大雄峯/野狐の公案/禅の真諦
悟道の詩的表現/麻三斤/儒・佛・道の混融
第七章 華厳と円覚――禅の哲学
佛を自分自身に体現/教外別伝/キルケゴールの痛言
禅の本質/是三無差別/禅家独特の教学様式
白隠/禅弊/大慧宗杲の気慨/看話禅/黙照禅
天道正覚の偈/曹洞の綿密/萬松行秀/華厳経
法蔵/東大寺の大仏/毘盧遮那佛/南無妙法蓮華経
華厳経の哲学/圭峰宗密/華厳の六相
人間喪失社会/花園天皇
第八章 陽明学の前夜――形式化する教学
漢民族の生命力/スラブ民族/元の支配が漢民族を再活性化
元衰退の原因/民族の興廃は気力次第/法匪と教匪
紅巾の賊/朱元璋/血の通った理想像
禍福生死に惑う朱元璋/功臣宿将を殲滅/日本征服計画
永楽帝/「吏治」澄清/国会議員と行政長官を分離
議論闘争の弊害/就職のための学問教育
王陽明/方孝孺/湛甘泉
第九章 王陽明の生涯と教学
良知・致良知/学問の「道」
「道」とは永遠と実践を意味するもの/息遊軒
和気と毒気/陽明の出生/幼時伝説
油断も隙もない少年/良心も鋭敏/陽明の五溺
進士及第/霊感体験/陽明の宿痾/投獄/龍場流謫
快活/命懸けの思索/悟道・開眼
知行合一/土民教化/全生命を打ち込む学問
際立った匪賊討伐/戦中講学/心中の賊を破るは難し
一掴一掌血、一棒一条痕/一点滴骨血/心霊の躍動する学風
ソクラテスと陽明/宸濠の叛乱/陽明の軍略
宦官の謀略/この心光明
第十章 天地萬物一体論
陽明の気韻溢るる書/道は固より自在、学も亦た自在
テイヤール・ド・シャルダン/古聖・先賢の洞察
天地、心を立つと為す/良知・致良知/自慊
辞を詭って俗に阿る/良知の学/度量と器量
惻隠の心/惰弱になった日本民族/佞をなす
孔子に対する悪口/天地萬物一体の仁/天を楽しんで命を知る
曾先之と文天祥/夫と婦/慊りないわが心
感激的精神/無力な国連/正気時あって光を放つ
十一章 抜本塞源論
顧東橋/聖人の意味/人、禽獣夷狄に淪み
天地萬物を以て一体となす/論語の新解釈/心体の同然に復る
「中」の弁証法的意味/唐虞三代の世/聞見の雑、記誦の煩
佛で木をつくる/聖人の学は至易至簡/訓詁の学
牛のケツ/良知の明らかなること萬古一日/猶興の人物
編集後記
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安岡正篤(やすおか・まさひろ)
1898(明治31)年、大阪市生まれ。大阪府立四条畷中学、第一高等学校を経て、1922(大正11)年、東京帝国大学法学部政治学科卒業。東洋政治哲学・人物学を専攻。同年秋に東洋思想研究所、1927(昭和2)年に(財)金〓(けい)学院、1931(昭和6)年に日本農士学校を設立。東洋思想の研究と人物の育成に従事。戦後、1949(昭和24)年に師友会を設立。広く国民各層の啓発・教化につとめ1983(昭和58)年12月鬼籍に入る。
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