内容紹介
児童文学の父であり、日本のアンデルセンと呼ばれる小川未明の童話「眠い町」、「やんま」など全46話を朗読で収録しています。
小川未明と聞いてピントくる人は少ないのではないでしょうか?
小川未明は数多くの作品を残していることから、「日本のアンデルセン」、日本児童文学の父」と称されています。生まれは1882年(明治15年)、新潟県高田(現上越市)。坪内逍遙などから学び、後に逍遥から「未明」の号を授かります。1961年(昭和36年)、享79歳で没。没後は上越市により新人発掘のコンクール、小川未明文学賞が創設されています。
小川未明の作品は明治~昭和にかけての当時の日本の生活、子ども達の暮らしなどが物語を通して感じることができ、日本の歩みを子どもたちに教えることができます。
そして、小川未明の作品の中には戦時中の背景が描かれているものあります。今、語り継がれることの少ない戦時中の経験を物語でわかりやすく子どもたちに 伝えられます。物語の中には社会批判、人間の悪しき心が垣間見られ、善悪の判断がつかない子供たちへの正しい道筋となる作品もあります。美しい文章で語られる未明の世界をご堪能下さい。
9巻に収録
「眠い町」
私はこの少年の名を知らないので仮にケーと名づけておきます。
世界旅行をしているある日、ケーは「眠い町」という名の不思議な町に行きました。
活気がなく、寂然とした町で建物は古びて壊れたままでした。どうして「眠い町」という名がついているかというと、この町を通る旅人は自然と体が疲れて眠くなるからです。
この話が伝わり、旅人はこの町を通ることをおそれるようになりました。
ケーは人々がおそれるこの町に行くことにしました。町に入るとケーも同じく眠くなり、いびきをかいて寝入ってしまいました。
自分を揺り起こしているように感じ驚いて起き上がりますと、大きな袋をかついだ一人のじいさんが立っていました。じいさんはケーに頼みごとを聞いてくれないかと言いました。
じいさんは新しい人間が来て私の領土をうばい、鉄道をしいたり電信をかけたりし、自然を壊された。私が背中にしょっている袋の中にある砂をかければ、どんなものでもすぐに腐り、疲れてしまう。この砂を分けるので、世界を歩くときにまいてくれとケーに言いました。
ケーは頼みごとを聞くことにし、アルプス山中を歩いているときに砂をまいてみました。すると・・・。。
「やんま」
正ちゃんはやんまを捕り逃がしてしまい、やんまは歩いてい行くおばあさんの背中にとまりました。
正ちゃんは気がつかれないようにおばあさんの後を追いかけ、おばあさんのうしろへいって手を伸ばしました。気がついたおばあさんは人違いですよと笑ってそのままゆきかけました。正ちゃんはまたおばあさんの後を追ったところをおばあさんに見つかり、おばあさんは正ちゃんをにらみつけました。
おばあさんが家に帰ると家の人たちが、やんまが背中にとまっていると教えました。おばあさんはやっと男の子が自分を追ってきた理由がわかり、あんなににらむのではなかったと思いました。でも、やんまを男の子から助け、いいことをしたとも考え、やんまを庭の木にとまらせました。晩方、おばあさんが縁側へ出てみると、やんまの羽だけが散らばっていて、こねこのたまが食べてしまったようです。これを見ておばあさんは・・・。
収録作品
眠い町
糸のない胡弓
馬車と子供たち
くもと草
白すみれとしいの木
すずめを打つ
戦争はぼくをおとなにした
船でついた町
愛は不思議なもの
二人の少年
ねことおしるこ
めくら星
谷にうたう女
木の上と下の話
はたらく二少年
子供と虫
春
すずめ
夢のような昼と晩
花の咲く前
駄馬と百姓
風船虫
角笛吹く子
生きている看板
赤い魚と子供
はちの巣
空晴れて
二度と通らない旅人
ふるさと
岩と起重機の上で
ゆずの話
風はささやく
少年の日二景
しんぱくの話
金が出ずに、なしの産まれた話
やんま
つばめと紅すずめ
紅いチューリップ
ボートを造る日
ひすいを愛された妃
政ちゃんと赤いりんご
町のおうむ
幼友だち(一)
幼友だち(二)
お母さんのさいふ
小鳥と兄妹
竹馬の太郎
小川未明(おがわ・みめい)
1882年4月7日-1961年5月11日
小説家・児童文学作家。本名は小川 健作(おがわ けんさく)。
「日本のアンデルセン」「日本児童文学の父」と呼ばれる。
娘の岡上鈴江も児童文学者。
新潟県高田(現上越市)に生まれる。
東京専門学校(早稲田大学の前身)専門部哲学科を経て大学部英文科を卒業。
坪内逍遙に師事し、島村抱月やラフカディオ・ハーン(小泉八雲)らにも影響を受けた。
在学中に処女作「漂浪児」を発表し、逍遥から「未明」の号を与えられ、
卒業直前に発表した「霰に霙」で小説家としての地位を築く。
1925年に早大童話会を立ち上げ、1926年以降は童話作家に専念する。
1953年、童話会の会員だった鳥越信と古田足日の二人を中心をした「少年文学宣言」
が発表され、未明は、古い児童文学として否定されるという、苦渋の晩年も送った。
代表作は、「金の輪」(労働文学)、「赤い蝋燭と人魚」(朝日新聞)
「月夜と眼鏡」(赤い鳥)、「野薔薇」(小さな草と太陽)など。
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