内容紹介
児童文学の父であり、日本のアンデルセンと呼ばれる小川未明の童話「牛女」、「時計のない村」ほか全47話を朗読で収録しています。
小川未明と聞いてピントくる人は少ないのではないでしょうか?
小川未明は数多くの作品を残していることから、「日本のアンデルセン」、日本児童文学の父」と称されています。生まれは1882年(明治15年)、新潟県高田(現上越市)。坪内逍遙などから学び、後に逍遥から「未明」の号を授かります。1961年(昭和36年)、享79歳で没。没後は上越市により新人発掘のコンクール、小川未明文学賞が創設されています。
小川未明の作品は明治~昭和にかけての当時の日本の生活、子ども達の暮らしなどが物語を通して感じることができ、日本の歩みを子どもたちに教えることができます。
そして、小川未明の作品の中には戦時中の背景が描かれているものあります。今、語り継がれることの少ない戦時中の経験を物語でわかりやすく子どもたちに 伝えられます。物語の中には社会批判、人間の悪しき心が垣間見られ、善悪の判断がつかない子供たちへの正しい道筋となる作品もあります。美しい文章で語られる未明の世界をご堪能下さい。
7巻に収録
「牛女」
ある村に、背が高く、耳の聴こえない女とその子供が、二人で暮らしていました。
女は牛女と呼ばれいるが、耳が聴こえないので分かりません。
ただ、自分のために子供が辛い思いをしないように、一生懸命働き、子供を大変かわいがりました。
しかし、病にかかって牛女は死んでしまいました。
子供は悲しみに暮れましたが、牛女の思いが遠くの山に自身の姿を浮かび上がらせ、
子供はそれを見て慰められていました。
村人に育てられた子供は、大きくなって勝手に村を飛び出し、やがて金持ちになって帰ってきました。
村人はこれを喜び、子供も育ててくれたお礼として村で事業を始めることにしました。
りんごを育てることにした子供であったが、実になる手前で虫に食べられ駄目になってしまいます。それが続き、村の物知りが、何か呪いがあるから、心当たりはないかと子供に尋ねました。子供はようやく大事に見守ってくれていた母親の供養をしていないことを思いだし、丁重に供養しました。
するとその年は・・・。
「冬のちょう」
青空ではあるが、冷たい目がじっと地上をのぞいているような日、美しい女ちょうは卵をどこに産んだらいいかと惑ってるようでした。
それは、秋の半ばであったため、自分のような美しい羽がはえて自由に飛べるようになるにはかなりの日数がなければならないからです。 こんな時分に産まれてくる自分の子をかわいそうと思うと同時に自分のことも不幸と考えたのです。
そんなひとりごとを言っていると、瞑想にふけっていたがまがえるが突然話しかけました。女ちょうは獲物をねらっていたこの怪物に気がつかず、びっくりしました。がまがえるは女ちょうを食べないと約束し、話を聞いて木の葉にとまり少し休むようにと言いました。ちょうは引き返し、自分のお母さんやお父さんの黄金時代のことを話して下さいと頼みました。 がま蛙は美しかった当時の世界ではあったが、ちょうが多くて人間が殺虫剤でちょうを追い回したことを語りました。
その後、ちょうは日当たりのいいからたちの木に産卵し、冬を前にして悪い時代に生まれてきたことをなげいていました。
その後のある寒い朝、枝の先にしがみついている青虫がありました。それを家の窓から見た主人は・・・。
収録作品
牛女
生きぬく力
二少年の話
つばめと魚
英ちゃんの話
古巣に帰るまで
笛と人の物語
くわの怒った話
窓の内と外
初夏の不思議
ペスをさがしに
町に憧れた山の娘
とんぼのおじいさん
あほう鳥の鳴く日
金歯
冬のちょう
左ぎっちょの正ちゃん
はまぐりとひきがえる
空の戦士
窓の下を通った男
武ちゃんの二日間
おばあさんとツェッペリン
風
人の身の上
青い玉と銀色のふえ
二番めの娘
赤いえり巻き
北の不思議な話
すいれんは咲いたが
いちじゅくの木
二つの琴と二人の娘
時計のない村
春の真昼
夕焼けがうすれて
青い花の香り
しいたげられた天才
さびしいおじいさんたち
泣きんぼうの話
僕がかわいがるから
はととりんご
笛吹きと女王
縛られたあひる
真吉とお母さん
奥さまと女乞食
谷間のしじゅうから
つじうら売りのおばあさん
赤土へくる子供たち
小川未明(おがわ・みめい)
1882年4月7日-1961年5月11日
小説家・児童文学作家。本名は小川 健作(おがわ けんさく)。
「日本のアンデルセン」「日本児童文学の父」と呼ばれる。
娘の岡上鈴江も児童文学者。
新潟県高田(現上越市)に生まれる。
東京専門学校(早稲田大学の前身)専門部哲学科を経て大学部英文科を卒業。
坪内逍遙に師事し、島村抱月やラフカディオ・ハーン(小泉八雲)らにも影響を受けた。
在学中に処女作「漂浪児」を発表し、逍遥から「未明」の号を与えられ、
卒業直前に発表した「霰に霙」で小説家としての地位を築く。
1925年に早大童話会を立ち上げ、1926年以降は童話作家に専念する。
1953年、童話会の会員だった鳥越信と古田足日の二人を中心をした「少年文学宣言」
が発表され、未明は、古い児童文学として否定されるという、苦渋の晩年も送った。
代表作は、「金の輪」(労働文学)、「赤い蝋燭と人魚」(朝日新聞)
「月夜と眼鏡」(赤い鳥)、「野薔薇」(小さな草と太陽)など。
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