内容紹介
児童文学の父であり、日本のアンデルセンと呼ばれる小川未明の童話「ねずみの冒険」、「電信柱と妙な男」ほか全61話を朗読で収録しています。
小川未明と聞いてピントくる人は少ないのではないでしょうか?
小川未明は数多くの作品を残していることから、「日本のアンデルセン」、日本児童文学の父」と称されています。生まれは1882年(明治15年)、新潟県高田(現上越市)。坪内逍遙などから学び、後に逍遥から「未明」の号を授かります。1961年(昭和36年)、享79歳で没。没後は上越市により新人発掘のコンクール、小川未明文学賞が創設されています。
小川未明の作品は明治~昭和にかけての当時の日本の生活、子ども達の暮らしなどが物語を通して感じることができ、日本の歩みを子どもたちに教えることができます。
そして、小川未明の作品の中には戦時中の背景が描かれているものあります。今、語り継がれることの少ない戦時中の経験を物語でわかりやすく子どもたちに 伝えられます。物語の中には社会批判、人間の悪しき心が垣間見られ、善悪の判断がつかない子供たちへの正しい道筋となる作品もあります。美しい文章で語られる未明の世界をご堪能下さい。
6巻に収録
「電信柱と妙な男」
ある町に妙な男が住んでいました。友人が誘いにきても、病気だとか用事があるといいへやの中に閉じこもり、夜になると独りぶらぶら外を歩くのが好きでありました。いつものように寝静まった町の往来を歩いていると、背の高い大男がの そりのそりと歩いてきました。妙な男がおまえはだれかと聞くと、背の高い男は電信柱だと答え、昼間は人通りがあるので自分みたいな大きなものは歩けないので、いつも今頃に散歩すると決めていると言いました。すると、今度は電信柱が 妙な男になぜいまごろ歩くのかと問いました。妙な男は世の中の人がみんなきらいだから顔をあわせたくないので、今時分歩くのだと答えました。電信柱はそれはおもしろい、これからは友達になろうと申し出たので、妙な男は承諾しまし た。身長差がありすぎて話しづらかったため、電信柱が妙な男を屋根の上にのせ、二人は夜の中を散歩しました。すると、雲間から月が出てお互いの顔がはっきりとわかりました。妙な男は電信柱の顔が真っ青で傷があることがわかりまし た。どうしたのかと聞くと、電信柱は時々恐ろしい電気が通ると真っ青になり、傷口は針金でつつかれた跡だといいました。それを聞いた妙な男は「危険だ、お前さんには触れない」と急に逃げようとしたが、高い屋根から降りられませでし た。そうるすうちに夜が明けてきましたが、妙な男は一向に屋根から降りられません。電信柱も帰る時間を遅れてしまい、やむおえずとんでもないところに突っ立て、なに知らぬ顔でいました。妙な男は電信柱に降ろしてくれと拝みながら頼むが、電信柱は声も出さず、身動きあ一つしません。通る人々はそれを見てみんな笑って・・・。
「金銀小判」
独り者の幸作は、寂しく暮らしていました。正月の夜、幸作がこたつに入り寝入っていると、お宝船や餅玉の木に結びつけるせんべいの小判を売る子供の声が聞こえました。だれも買ってくれないのをかわいそうに思った幸作は、小判の一 包を買ってやりました。その晩、買った小判が本当の金銀小判で自分が大金持ちになった夢を見て、驚きと喜びから目をさましましたが、すべて夢だとわかりがっかりしました。それでも諦めきれず、昨日買った小判を取り出してみます と、持ち上げられないくらいの重みがありました。不思議に思い包の中を確認すると、本当の金銀小判でありました。幸作は欲が出てきて、もう一包買えば村中で一番の金持ちになったのにと思いました。幸作は子供をやっとの思いで探し出 し、小判を全て買い取りました。彼は勇んで家に帰り、昨夜買った金銀小判を取り出してみると・・・・・。
収録作品
電信柱と妙な男
ちょうと三つの石
花かごとたいこ
つづれさせ
少年とねこの子
いんことしじゅうから
うさぎと二人のおじいさん
馬を殺したからす
金銀小判
青空の下の少女
酒屋のワン公
引かれていく牛
犬車がゆく
火を点ず
仲よしがけんかした話
天女とお化け
真心のとどいた話
海が呼んだ話
白壁のうち
草を分けて
子供が寝てから
島の暮れ方の話
託児所のある村
秋のお約束
赤い船とつばめ
石段に鉄管
たましいは生きている
珍しい酒もり
おかめどんぐり
もずとすぎの木
道の上で見た話
かざぐるま
小さい兄弟
遠方の母
おばあさんと黒ねこ
金魚売り
きつねをおがんだ人たち
僕の通るみち
寒くなる前の話
三つのお人形
歩いてゆけるぞ
笑わなかった少年
ねずみの冒険
少女がこなかったら
黒い人と赤いそり
からすとかがし
朝と町の少年
なまずとあざみの話
助け合った鳥たち
犬と古洋傘
だまされた娘とちょうの話
雪とみかん
お母さんの御乳
海のおばあさん
般若の面
船の破片に残る話
ペスときょうだい
宿題
春になる前夜
小さな年ちゃん
さかずきの輪廻
小川未明(おがわ・みめい)
1882年4月7日-1961年5月11日
小説家・児童文学作家。本名は小川 健作(おがわ けんさく)。
「日本のアンデルセン」「日本児童文学の父」と呼ばれる。
娘の岡上鈴江も児童文学者。
新潟県高田(現上越市)に生まれる。
東京専門学校(早稲田大学の前身)専門部哲学科を経て大学部英文科を卒業。
坪内逍遙に師事し、島村抱月やラフカディオ・ハーン(小泉八雲)らにも影響を受けた。
在学中に処女作「漂浪児」を発表し、逍遥から「未明」の号を与えられ、
卒業直前に発表した「霰に霙」で小説家としての地位を築く。
1925年に早大童話会を立ち上げ、1926年以降は童話作家に専念する。
1953年、童話会の会員だった鳥越信と古田足日の二人を中心をした「少年文学宣言」
が発表され、未明は、古い児童文学として否定されるという、苦渋の晩年も送った。
代表作は、「金の輪」(労働文学)、「赤い蝋燭と人魚」(朝日新聞)
「月夜と眼鏡」(赤い鳥)、「野薔薇」(小さな草と太陽)など。
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