収録内容
『沈黙』執筆直後(43歳)に行なわれた、作者自身による『沈黙』論ともいうべき重要な講演から、『深い河』執筆に至る境地を語った最晩年の講演まで、カトリック作家が人生の節目に語り遺した「宗教と文学」。作家が晩年、「一人でそっと耳にする夜がある」と語っていた母・遠藤郁の聖歌も付した。
第一巻 『沈黙』について
『沈黙』発表直後の興味深い講演。長崎で一枚の踏絵を眼にし、そこに残された黒ずんだ足跡と、摩滅した哀しげなイエスの顔から『沈黙』の着想を得て、それを書き上げるまでの道のりを語る。著者自身による貴重な『沈黙』論。一九六六年収録・45分)
第二巻 日本人とキリスト教-その1-(一九九〇年収録・35分)
第三巻 日本人とキリスト教-その2-(一九九〇年収録・44分)
遠藤周作の一貫したテーマであった「日本人とキリスト教」の講演。『死海のほとり』『イエスの生涯』『侍』『スキャンダル』などの作品群発表後の時期で、「宗教は思想ではなく、意識下のものと結びついている」という認識のもとに、自身のキリスト教体験(西洋体験)を語る。
第四巻 初めて日本が西洋と出会った頃
二〜三巻の西洋体験をさらに掘り下げて、日本の歴史を辿る。織田信長の時代にヨーロッパへ最初に留学した人物を取りあげながら、そこに、戦後初の留学生である自己の
人生を重ねあわせて語る。一九九二年収録・50分)
第五巻 心の不思議 命の不思議 (「『万華鏡』その後」改題)
「老年になると人はそれまでと違って魂で世界を感じる」と語り出す声はわずかに掠れている。しかしその言葉は不思議にも以前よりかえって耳にしみこんでくる。話すうちに言葉は熱を帯び「大いなる命の世界」が聴く者の心を打つ。一九九三年収録・68分)
第六巻・付録 遠藤郁聖歌集[ポリドール盤]
遠藤周作氏の母親・遠藤郁女史が若き日に収録した聖歌集も収録(13分)
遠藤周作(えんどうしゅうさく)
大正12東京生れ。慶応大の恩師佐藤朔から影響を受けカトリック文学に傾倒。30年『白い人』で芥川賞、33年 『海ど毒薬』で新潮社文学賞、と毎日出版文化賞を受賞。その後『沈黙』など著書多数。元日本ペンクラブ会長。平成7年文化勲章 受賞。同8年没。
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