内容紹介
児童文学の父であり、日本のアンデルセンと呼ばれる小川未明の童話「金の輪」、「紅すずめ」ほか全52話を朗読で収録しています。
小川未明と聞いてピントくる人は少ないのではないでしょうか?
小川未明は数多くの作品を残していることから、「日本のアンデルセン」、日本児童文学の父」と称されています。生まれは1882年(明治15年)、新潟県高田(現上越市)。坪内逍遙などから学び、後に逍遥から「未明」の号を授かります。1961年(昭和36年)、享79歳で没。没後は上越市により新人発掘のコンクール、小川未明文学賞が創設されています。
小川未明の作品は明治~昭和にかけての当時の日本の生活、子ども達の暮らしなどが物語を通して感じることができ、日本の歩みを子どもたちに教えることができます。
そして、小川未明の作品の中には戦時中の背景が描かれているものあります。今、語り継がれることの少ない戦時中の経験を物語でわかりやすく子どもたちに 伝えられます。物語の中には社会批判、人間の悪しき心が垣間見られ、善悪の判断がつかない子供たちへの正しい道筋となる作品もあります。美しい文章で語られる未明の世界をご堪能下さい。
5巻に収録
「金の輪」
太郎は長い間、病気で寝ていましたがようやく床から出られるようになりました。しかし、三月末でまだ朝晩寒いために、日の当たる昼間は外へ出られましたが、晩になると家に入るようにと言われていました。
ある日、太郎は外に出ましたが誰も友達は遊んでいません。太郎はしょんぼりとして、家の目に立っていました。すると、金の輪が触れ合う音がし、一人の少年が二つの金の輪をまわしながら走ってきました。太郎にはまったく見覚えのな い少年でしたが、少年は太郎に微笑しました。それは知り合いの友達にするようであり懐かしげに見えました。
次の日の午後、また太郎は外へ出てみると、昨日と同じ時刻にあの少年が二つの金の輪をまわして走ってきました。そして、昨日よりもいっそう懐かしげに微笑み、なにかいいたげな様子でした。その晩、太郎は二日も同じ時刻に金の輪を まわした少年を見たことを母親に話しましたが信じてもらえませんでした。太郎は少年と友達になり、金の輪を一つ分けてもらい、どこまでも走って行く夢をみました。
明くる日から太郎は熱が出て、太郎の病気は・・・。
「王さまの感心された話」
世界が造られた時、三人の美しい天使がいました。一番上のお姉さんはやさしく、口数の少ない人で、次の妹は目のぱっちりとしたやさしい人で、末の弟は快活な少年でありました。世界が作られる始まりであったため、三人は何かに姿を変えなければいけませんでした。しかし、一度姿を変えてしまえば二度と天使には戻れません。そこで、一番上の姉は星に、次の妹は花に、弟は小鳥になりました。星は夜ごとに輝き、花は夜露を身に受け、小鳥は昼間、花のそばでさえずりましたが、一番上の姉の姿を見ることはできず、三人いっしょに顔をあわせることができませんでした。
それから幾世紀がたち、地上をつかさどる王さまがあらわれました。王様自身が勤勉なので、ありや、はちなど勤勉なものがなんでも好きでした。しかし、美しく咲いた花を見ると怠け者だと思い、星はなんの役に立つのだろうと思い、小 鳥はやかましいと思っていました。そのとき、遠い昔のことや、幾千年の後のことなどがわかる魔法使いが王さまのもとに来ました。王さまは、星、花、小鳥がなんのためにいるのかと魔法使いに聞きました。魔法使いは祈りを捧げ、星、花、小鳥にそれぞれ問いました。すると、王様の思ったこともない答えで・・・・・。
収録作品
金の輪
武ちゃんと昔話
もののいえないもの
ある夜の星たちの話
しらかばの木
お姉ちゃんといわれて
大根とダイヤモンドの話
山へ帰りゆく父
青葉の下
赤い船のお客
五銭のあたま
汽船の中の父と子
高い木と子供の話
花と人間
春近き日
南島の女
負傷した線路と月
街の幸福
月の中へ消えたこい
新しい友だち
お母さんのかんざし
花とあかり
西洋だこと六角だこ
からすの唄うたい
町はずれの空き地
お母さまは太陽
汽車は走る
おかしいまちがい
どこかで呼ぶような
紅すずめ
おじいさんが捨てたら
春の日
汽車の中で見たお話
兄と魚
アパートで聞いた話
雪くる前の高原の話
ある男と無花果
僕が大きくなるまで
空にわく金色の雲
ひすいの玉
王さまの感心された話
とびよ鳴け
愛は花よりは香ばし
心は大空を泳ぐ
小さなねじ
太陽の下で
山へ帰ったやまがら
笑わない娘
ひばりのおじさん
小さな金色の翼
雪の降った日
公園の花と毒蛾
1882年4月7日-1961年5月11日
小説家・児童文学作家。本名は小川 健作(おがわ けんさく)。
「日本のアンデルセン」「日本児童文学の父」と呼ばれる。
娘の岡上鈴江も児童文学者。
新潟県高田(現上越市)に生まれる。
東京専門学校(早稲田大学の前身)専門部哲学科を経て大学部英文科を卒業。
坪内逍遙に師事し、島村抱月やラフカディオ・ハーン(小泉八雲)らにも影響を受けた。
在学中に処女作「漂浪児」を発表し、逍遥から「未明」の号を与えられ、
卒業直前に発表した「霰に霙」で小説家としての地位を築く。
1925年に早大童話会を立ち上げ、1926年以降は童話作家に専念する。
1953年、童話会の会員だった鳥越信と古田足日の二人を中心をした「少年文学宣言」
が発表され、未明は、古い児童文学として否定されるという、苦渋の晩年も送った。
代表作は、「金の輪」(労働文学)、「赤い蝋燭と人魚」(朝日新聞)
「月夜と眼鏡」(赤い鳥)、「野薔薇」(小さな草と太陽)など。
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