「スタジオ録音の怪異談」 四代目 桂文我
スタジオ録音で「怪異談」を収録する作業は、毎月開催の猫間川寄席の会場となる、玉造・さんくすホールで行われていますが、収録が深夜に及ぶことも多くあり、録音作業の小野裕司氏の表情も鬼気迫り、背筋に冷たい物が走る時もありました。
ライブ録音とスタジオ録音では、雰囲気に大きな差があるだけに、ライブ録音の方が臨場感があって良いと思われる方も多いでしょうが、スタジオ録音の方が落ち着いて、細かく演じている場合も多いと言えましょう。
還暦も越えた昨今、頭の中にあるネタは、出来るだけ、録音して、残して行きたいと思っていますので、ライブ録音でも、スタジオ録音でも、その場の怪異談を楽しんでいただければ、幸いです。
シリーズの中には、滑稽怪談や、細工の名人の不思議な話など入っていますが、これも彩りの一つと捉えていただきますように…。
あなただけの耳に、心を込めた怪異談を流し込みますので、どうぞ、宜しくお付き合い下さいませ。
内容紹介
「狼講釈」(おおかみこうしゃく)(21分)
江戸時代に刊行された和本に原話が載っている落語で、かなり古くから上演されていた
と思われます。山陽地方が舞台になっている珍品で、当時の風俗が濃厚に描かれているだ
けに、今後も全国各地で興味深く楽しんでいただけるネタではないでしょうか?
「お盆」(おぼん)(16分)
この落語のタイトルを見て、「御先祖様を迎える、お盆のことだろう」と思う方が多い
でしょうが、そうではありません。茶碗・湯呑み・皿・小鉢などを運ぶ、お盆のことです
から、お間違え無く!
「乙女狐」(おとめぎつね)(19分)
数多くある上方落語の中で、将に珍品と言えるネタの一つでしょう。春先のハンナリし
た雰囲気もあり、かなり面白いと思うのですが、演じる者は稀になりました。それでは、
ケッタイな世界へ御案内…。
「魔風」(まかぜ)(9分)
以前は「かひんさん」「天狗風」という演題で頻繁に上演されていたようですが、近年
は滅んだネタの一つになっています。改良を加えて、楽しんでいただける内容にしたつも
りですが、如何でしょうか?
「歯抜き茶屋」(はぬきぢゃや)(17分)
質の悪い悪戯も、落語の世界では面取りされて、円やかになっているようです。この落
語は、今日の寄席や落語会で上演されることは皆無に近いでしょう。昔の悪戯を珍品で楽
しむのも、粋ですよ。
「おたおたの太助」(おたおたのたすけ)(24分)
かなり古くから上演さられていた上方落語ですが、速記本でも残らず、レコードにも吹
き込まれていません。しかし、東京落語に移植された速記が残っているため、それを下敷
きにして、上方落語に再構成しました。興味深く聞いていただければ、幸いです。
「追炊」(おいだき)(12分)
コント仕立ての構成が、急に芝居噺の様相となります。ネタの途中の緊張のシーンがあ
ってこそ、前後の滑稽さが引き立つでしょう。内容が急展開するネタを一つ挙げるとすれ
ば、この落語が一番かも知れません。
四代目 桂 文我(かつら ぶんが) プロフィール
昭和35年生まれ、三重県松阪市出身。昭和54年3月、二代目桂枝雀に入門し、桂雀司を名乗る。平成7年2月、四代目桂文我を襲名。全国各地で、桂文我独演会・桂文我の会や、親子で落語を楽しむ「おやこ寄席」も開催。 平成25年4月より、相愛大学客員教授に就任し、「上方落語論」を講義。国立演芸場花形演芸大賞、大阪市咲くやこの花賞、NHK新人演芸大賞優秀賞、芸術選奨文部科学大臣賞など、多数の受賞歴あり。
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