「スタジオ録音の怪異談」 四代目 桂文我
スタジオ録音で「怪異談」を収録する作業は、毎月開催の猫間川寄席の会場となる、玉造・さんくすホールで行われていますが、収録が深夜に及ぶことも多くあり、録音作業の小野裕司氏の表情も鬼気迫り、背筋に冷たい物が走る時もありました。
ライブ録音とスタジオ録音では、雰囲気に大きな差があるだけに、ライブ録音の方が臨場感があって良いと思われる方も多いでしょうが、スタジオ録音の方が落ち着いて、細かく演じている場合も多いと言えましょう。
還暦も越えた昨今、頭の中にあるネタは、出来るだけ、録音して、残して行きたいと思っていますので、ライブ録音でも、スタジオ録音でも、その場の怪異談を楽しんでいただければ、幸いです。
シリーズの中には、滑稽怪談や、細工の名人の不思議な話など入っていますが、これも彩りの一つと捉えていただきますように…。
あなただけの耳に、心を込めた怪異談を流し込みますので、どうぞ、宜しくお付き合い下さいませ。
内容紹介
「肝つぶし」(きもつぶし)(18分)
このネタの他、心の病いを題材にした落語は「崇徳院」「千両みかん」「宇治の柴船」
などがあります。「肝つぶし」は、人間の心の遣り取りが濃厚に出ている逸品だと思いま
すが、如何でしょうか?
「狐供養」(きつねくよう)(5分)
おそらく、仏教説話から出来た落語でしょう。短編でありながら、オチは上等。尊い話
や譬えでも、必ず、穴はあるという証明のようなネタです。オチの後は、どうなったので
しょうか?
「外科本道」(げかほんどう)(13分)
洒落た内容の短編ですが、寄席や落語会で上演されることは皆無に等しいと言えましょ
う。医者を題材にした落語は「犬の目」「ちしゃ医者」「夏の医者」などが有名で、それ
らと比べても地味な内容だけに、時代の置き去りになったのかも知れません。
「恵比須小判」(えびすこばん)(7分)
日本でレコードの録音が始まったのが、明治三十六年。レコードに吹き込まれやすかっ
たのは、三分で終わるような小噺でした。「恵比須小判」は、かなり便利なネタだったよ
うで、大正時代に二世曾呂利新左衛門や初代桂春團治が、レコードに吹き込んでいます。
「高野駕籠」(こうやかご)(15分)
雑誌の中で眠っていたネタを再構成し、上演可能にした落語です。コント仕立てであり
ながら、教訓的な内容も含まれているだけに、オチに至った時、しっかりしたネタを聞い
たという印象を持っていただけるでしょう。
「占い八百屋」(うらないやおや)(45分)
東京落語では「お神酒徳利」という演題で上演され、六代目三遊亭圓生が昭和天皇の御
前で口演しました。ハプニングが幸運を呼ぶことが如実に表現されている逸品だけに、未
来永劫、演じ続けられる落語と言えるのではないでしょうか。
「石返し」(いしがえし)(14分)
かなり面白い内容のネタですが、寄席や落語会で上演されることは稀と言えましょう。
明治維新の時代にして、士族の商法的な構成で演じられることも多かったようで、芝居や
コントで演じても面白さは伝わると思います。
四代目 桂 文我(かつら ぶんが) プロフィール
昭和35年生まれ、三重県松阪市出身。昭和54年3月、二代目桂枝雀に入門し、桂雀司を名乗る。平成7年2月、四代目桂文我を襲名。全国各地で、桂文我独演会・桂文我の会や、親子で落語を楽しむ「おやこ寄席」も開催。 平成25年4月より、相愛大学客員教授に就任し、「上方落語論」を講義。国立演芸場花形演芸大賞、大阪市咲くやこの花賞、NHK新人演芸大賞優秀賞、芸術選奨文部科学大臣賞など、多数の受賞歴あり。
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