市朗妖怪百科とは
実話系怪談を語る怪談師や作家、タレントが増えている。
語り手も聞き手も、怪異だの幽霊だのを本気で信じているのかどうかは解らないが、古来より日本人はこういった怪談を楽しむ遺伝子を持っているらしい。
しかし、そんな中で、狐狸に化かされたり、河童や天狗に遭遇した、巨龍を見たという話があったとしたら、どう思れるだろうか?
幽霊は人が死んで成仏できなかったもの。それは百歩譲って理解したとして、妖怪なんてこの現代社会にいるわけがない。そう思われるだろう。
だが一方で、そんな現代の妖怪遭遇談が、私の元には集まってきている。そんな妖怪譚をまとめ、お聞かせすることにしたい。
同時に、古文献や伝承に現れた妖怪たちと比較、関連付けながら、わが日本に今も棲みつく妖怪たちを紹介しようと試みるものである。
内容紹介
『市朗妖怪百科 第六集 〜地獄から来る鬼を見た人たち〜』
鬼といえば頭に牛角、大きな口に牙、青や赤色の肌に虎の腰巻という形態をイメ
ージする人も多いだろう。だがもともと鬼は目に見えないよからぬ“気”であったり
霊であったりした。それが仏教や道教の伝来によって仏に帰依する者となったり、
人の心にある嫉妬や怨念をさすようになった。その経過であのような形として描
かれ、般若やなまなりといった形相が作られたとのである。
しかし、実話としての怪異談を蒐集していると、その作られたはずの鬼を見、恐
ろしい体験をしたという人もいる。それらの話を全て嘘、妄言と否定してしまう
と怪異蒐集家の私としては何も生まないと思う。
鬼の歴史、民俗史を紐解きながら、鬼を見たという体験談をみていこうと思う。
そして恐ろしい鬼はいるということを実感していただこう。
「呪い村」(23分)
芸人G氏からもたらされたある村に関する情報。彼の知り合いが本家に婿養子に行くという。祝福を言うと「実は行きたくない」という返事があった。
話を聞いてみると、本家では幼いころから様々な怪異を目撃していて、それを封じる結界が張ってあるというのだ。さらに奇妙な箱があると。
私が思うにそれは呪詛がかけられていて、箱はコトリバコらしい。現地に行ってみると、実に奇妙な光景を見ることになる。
「なまなりさん」(7分)
鬼とは一つは人の闇の心が呪術によって発動したものを言う。人が鬼となって相手に大いなる負をもたらす。時には殺し、家系を絶やす。
鬼になる手前の状態をなまなり、という。
なまなりとなって、相手を殺しながら呪詛返しで絶えたある美人姉妹の話を聞かせよう。
「鬼とは何か」(30分)
鬼はもともと古代中国からもたらされたモノで、目に見えない死者の霊のことであった。しかしこれが日本に渡って恐ろしいものの代名詞となった。
そして仏教、道教の伝来からそれらは視覚化され、頭に角、口に牙、赤や青と言った身体を持ち、虎の腰布を付けたキャラクターが形成された。
鬼の形は人が創造したものである。まずそういった鬼に関する歴史や伝承から鬼とは何かを考察する。
「今昔物語が描いた鬼」(19分)
平安時代になると、都に住む天皇は鬼を恐れ、結界を張り、陰陽師に退散をさせたという話が数多く残る。
『今昔物語』にもそのような鬼の話が記される。当時の人々にとって、鬼はいて、人を食ったのである。
しかしそれらは人が想像し、作ったものである、と民俗学の先生方は言う。それに異論はない。だが怪異蒐集家の立場から言うと、現実に鬼の姿を見たという話もあるのだ!!
「鬼の予言」(4分)
ある人が高校生の頃、いきなり友人から「お前、鬼って信じるか?」と聞かれたという。友人は見た、というのだ。
あの角を持つ鬼を。一度や二度ではない。そしてある予言をしたというのだ。それは実に恐ろしい予言だった。
「鬼の顔」(2分)
ある女性も若いころ、鬼の顔を見たという。深夜寝ていると、部屋の中で電気がスパークしたように明るくなり目が覚めたという。
すると、そこに……。
「神社の鬼」(11分)
ある人は幼いころ、近所の神社でかくれんぼをしていて、見た、という。鬼の形をした老婆を。友達は信じてくれなかったが後日、同じ神社で子供たちが鬼を見たという噂が立った。
そしてとうとう弟が鬼を見たと、泣いて帰ってきたことがあった。父にそのことを言うと心当たりがあるという。
「般若」(6分)
東京で出版社に勤務するOLが、長野県の実家に車で帰る時、真夜中にある廃屋を見る。ある時信号待ちしていて廃屋に目が行った。
そこに般若の顔をした顔がいくつもあったという。菩提樹寺の僧侶にそのことを言うと、おそるべき事実が発覚した。
「鬼が来る」(11分)
ある人の祖父の体験談である。出入りをしていた豪商の息子が道楽者で暴力をふるっては周囲に迷惑をかけ、実の母や嫁にも手をかける男だったという。
地元の伝承によればこのような男は、死ねば地獄から鬼が迎えに来るらしい。ところがこの男が死ぬとき、不可解なことが起こったのだ。
実際に、鬼が来たのだ……!
中山 市朗(なかやま いちろう) プロフィール
作家、怪異収集家
1982年、大阪芸術大学映像計画学科卒業。映画の助監督や黒澤明監督の『乱』のメイキングの演出などに携わる。
1990年、扶桑社から木原浩勝との共著で『新耳袋〜あなたの隣の怖い話』で作家デビュー。『新耳袋』はそれまでただ怪談で括られていたものから、実話だけにこだわり百物語を一冊の著書で実現化させた。
『新耳袋』は後にメディアファクトリーより全十夜のシリーズとなり復刊。『怪談新耳袋』として映画やドラマ、コミックとして展開。
Jホラーブームを作った作家や映画監督に大きな影響を与え、ブームをけん引することになる。
著書に『怪異異聞録・なまなりさん』『怪談実話系』『怪談狩り』シリーズなどがある。
怪談は語ることが重要と、ライブや怪談会、放送などでも積極的に怪談語りを行っている。その他の著書に『捜聖記』『聖徳太子・四天王寺の暗号』『聖徳太子の「未来記」とイルミナティ」など多数。
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