内容紹介
世田谷警察署の刑事であるわたしが出くわした、ひとつの事件。
拳銃自殺したのは南田収一という三十八歳の男ですが、その動機が妙だ。
故人の友だちに聞き込んだところ、「おれは死にたい。それとも、あいつを殺してしまいたい」と、酔ったまぎれにわめいていたと知りました。
つまり、南田は心底から惚れた自分の妻に袖にされ、失恋したから自殺したというのです。
しかしわたしは、この結論に満足しませんでした。
長年刑事をやってきた経験からの勘というやつが承知しないのです。
ですからわたしは、この事件が警察の手を離れてからも、余暇を利用して深く探ってみました。
変事があった当時、女中は不在で、南田は虫歯が痛むと近所の歯医者へ行き、
帰ったかと思うとそのまま書斎にとじこもり、ピストルの筒口を口の中へ入れて発射したというのです。
たまは、シックイ壁に深く突き刺さっていました。
わたしは奥さんに聴取するうち、何か隠しているなという感じを受けました。
そして、個人の身辺や通っていた歯医者を詳しく調べたのです。
こうして、わたしはひとつの仮説に辿り着きました。
非常に突飛な仮説ですが、この考えは、状況証拠とぴったり適合するのです……。
江戸川乱歩(えどがわ・らんぽ)
日本の推理小説家。1894年10月21日生まれ、三重県生まれ。筆名は、19世紀の米国の小説家エドガー・アラン・ポーに由来する。数々の職業遍歴を経て作家デビューを果たす。本格的な推理小説と並行して『怪人二十面相』、『少年探偵団』などの少年向けの推理小説なども多数手がける。代表作は『人間椅子』、『黒蜥蜴』、『陰獣』など。1954年には乱歩の寄付を基金として、後進の推理小説作家育成のための「江戸川乱歩賞」が創設された。
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