市朗妖怪百科とは
実話系怪談を語る怪談師や作家、タレントが増えている。
語り手も聞き手も、怪異だの幽霊だのを本気で信じているのかどうかは解らないが、古来より日本人はこういった怪談を楽しむ遺伝子を持っているらしい。
しかし、そんな中で、狐狸に化かされたり、河童や天狗に遭遇した、巨龍を見たという話があったとしたら、どう思れるだろうか?
幽霊は人が死んで成仏できなかったもの。それは百歩譲って理解したとして、妖怪なんてこの現代社会にいるわけがない。そう思われるだろう。
だが一方で、そんな現代の妖怪遭遇談が、私の元には集まってきている。そんな妖怪譚をまとめ、お聞かせすることにしたい。
同時に、古文献や伝承に現れた妖怪たちと比較、関連付けながら、わが日本に今も棲みつく妖怪たちを紹介しようと試みるものである。
内容紹介
『市朗妖怪百科 第四集 〜 想像上の妖怪? 神? 未知生物として実在? カッパ目撃談の数々を語る!』
日本の妖怪での代表格の一つはカッパであろう。カッパは飛鳥時代にはその原型が示唆され、大陸から大挙やって来たという伝説も残る。
その正体は、中国伝来の水神であったり、異民族であったりしたのだろうが、それでもしばしば目撃され捕獲されたという記録もある。絵に残されたそれは、まさにあのカッパそのものである。
私が蒐集した現代の実話系怪談に中にもカッパ目撃談は数多く存在する。目撃談としてのカッパと歴史的背景、文献等からカッパの正体を考察してみようと思う。
「モノノケの影」(8分)
筆者が大学時代に聞いたK先輩の体験談。水産大学で警備をしていたK先輩は、真夜中、いけすで魚を捕るモノノケを見たという。
モノノケは子供くらいの大きさで、飛翔して姿を消したという。その姿は、河童そのものであった、と。
「沼地からの訪問者」(9分)
ある郊外に家を建てた学校教師。だが休みの日の午後に玄関のドアをノックされる。 出るが誰もいない、という日が続いた。ある日気が付いた。
その何者かは、近くの池からやってきて、玄関の所で姿を消している。
ところがある日、玄関の戸を開けっ放しでいたら、足跡が中に入っていた…。
「禁断の山道」(6分)
岡山県の山間で生まれ育ったというJさんは、小学校までの遠い道のりを歩いて通っていた。ある日、遅刻しそうになった。そこで山越えの道をとった。
だがこの道は、決して通ってはならない、と家族から注意されていた道。
でも言わなければばれない、そう思って道を行くと、奇妙なものと鉢合わせをする。
「どこの子?」(5分)
岡山県出身のある落語家さん。彼も田舎で育ち、周りに子供もいないので近所のおじさんと釣りをよく行ったという。
ある日、夜釣りをしていると、明らかにカッパと思われるものと遭遇する。しかしおじさんは立腹している。知らない子に釣りを邪魔されたと。ところが……。
「張り手」(4分)
ある温泉町に住むSさん。幼いころ、夜中に山の方からトーン、トーンと連打される音をよく聞くようになる。近所の大人たちも不思議がり、音がする場所をつきとめたという。
音のヌシは、大木に向かって張り手をする河童であったという。だがそこは毒ガスが噴出していて近づけない…。
「カッパを見た」(3分)
昭和40年代、和歌山から大阪への通勤途中、紀ノ川の鉄橋で、河童を見た、という男性がいた。彼によるとそれは…!?
「カッパは実在するという記録 (1)」(21分)
カッパ。それは人の想像上のものなのか、伝説の元にあるものは一体何なのか、それとも?
まずは文献上に現れた河童を洗い出していく。それは『日本書紀』にその原型は現れ、古代中国の水虎という水神に行きつく。
「川内(せんだい)ガラッパ」(4分)
九州には大陸からカッパが大挙やって来たという伝説が残っている。ガラッパと呼ぶ。
鹿児島県出身のタクシーのある運転手は、幼いころ、故郷でガラッパと遭遇したことがあった、という。
「キュウリ」(10分)
看板設置の作業に携わるWさんたちは、ある日、河原で弁当を食べようと道を捜していると、人が飛び込む音がした。
急いで音がしたあたりに行ってみると、そこには山積みされたキュウリの山が!? しかも、不可思議なことがあったのだ。
「カッパは実在するという記録 (2)」(8分)
文献上では架空の動物のように解釈されるが、一方、河童は実在して、捕獲されたいう話も各地に残る。そして戦国時代には実際に生息している動物だと思われていた節もある。
また、江戸時代にはその絵も描かれ、蘭学の医者たちがこぞって研究をしていた事実もあるのだ。
「対馬に現れたカッパ(南山宏さんのレポート)」(13分)
超常現象研究家の南山宏氏からお聞きした対馬の河童騒動の一部始終。真夜中に目撃された黒い子供のようなモノ。それは足跡を残していて川から川へと移動していた。
地元警察もそのサンプルを採取していたといい、それは人間の物ではなく、どの動物に該当しない体液だとされたという。南山氏は現場へと赴き詳細な記録をレポートしていたのである。
「グレイを見た」(5分)
ある広告代理店の社長が「宇宙人を見た」と興奮していたことがあったという。普段そんなことを言わない社長がなぜ?
社員も取引先もそれを訝って、社長は誰も信じてくれないからと今度は沈黙しだした。その宇宙人は、あのグレイそっくりだったというが?
「紀ノ川のカッパ」(6分)
作家の竹内義和さんの父の体験談である。昭和40年代の事。紀ノ川でいつも通り磯釣りをしていると、二人組の大学生に声をかけられ、写真を見てくれという。
近くの鉄橋を通る電車から撮られた一枚。そこにはお父さんと、どう見てもカッパ、が写っていた。ところがこの写真を巡って不可解なことが起きるのである。
「行方不明」(5分)
カッパの写真を撮ると、恐ろしいことが起きる。私が作家になる前のこと。ある雑誌編集部で編集長と話していると編集長あての電話があった。
北海道に取材に行っているライターが、湖の畔で、二本足歩行の蛙のお化けを写真に撮ったという。五、六歳児の子供の大きさだったという。それって…?
そしてやはり、それは起こった。
中山 市朗(なかやま いちろう) プロフィール
作家、怪異収集家
1982年、大阪芸術大学映像計画学科卒業。映画の助監督や黒澤明監督の『乱』のメイキングの演出などに携わる。
1990年、扶桑社から木原浩勝との共著で『新耳袋〜あなたの隣の怖い話』で作家デビュー。『新耳袋』はそれまでただ怪談で括られていたものから、実話だけにこだわり百物語を一冊の著書で実現化させた。
『新耳袋』は後にメディアファクトリーより全十夜のシリーズとなり復刊。『怪談新耳袋』として映画やドラマ、コミックとして展開。
Jホラーブームを作った作家や映画監督に大きな影響を与え、ブームをけん引することになる。
著書に『怪異異聞録・なまなりさん』『怪談実話系』『怪談狩り』シリーズなどがある。
怪談は語ることが重要と、ライブや怪談会、放送などでも積極的に怪談語りを行っている。その他の著書に『捜聖記』『聖徳太子・四天王寺の暗号』『聖徳太子の「未来記」とイルミナティ」など多数。
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