市朗妖怪百科とは
実話系怪談を語る怪談師や作家、タレントが増えている。
語り手も聞き手も、怪異だの幽霊だのを本気で信じているのかどうかは解らないが、古来より日本人はこういった怪談を楽しむ遺伝子を持っているらしい。
しかし、そんな中で、狐狸に化かされたり、河童や天狗に遭遇した、巨龍を見たという話があったとしたら、どう思れるだろうか?
幽霊は人が死んで成仏できなかったもの。それは百歩譲って理解したとして、妖怪なんてこの現代社会にいるわけがない。そう思われるだろう。
だが一方で、そんな現代の妖怪遭遇談が、私の元には集まってきている。そんな妖怪譚をまとめ、お聞かせすることにしたい。
同時に、古文献や伝承に現れた妖怪たちと比較、関連付けながら、わが日本に今も棲みつく妖怪たちを紹介しようと試みるものである。
内容紹介
『市朗妖怪百科 第二集 〜狐狸妖怪のキツネの巻 人を化かすメカニズム!』
日本人は古来よりキツネに騙され、化かされたという歴史を持っている。
ところが最近の日本人はキツネに騙されなくなったなどと言われている。
自然破壊、高度成長、科学合理主義、村社会の崩壊……。
要因はいろいろ挙げられる。しかし、怪異蒐集家として言わせていただくと、
現代の日本人もキツネに化かされ続けていると断言できる。
しかし一方でこの現代社会において、ほんとうにキツネが人を化かしたりするものなのだろうか?
寄せられた怪異体験談を分析しながら、そのメカニズムを解いてみようと思う。
「からまる脚」(10分)
石狩地方へサイクリングに出かけた数人の中学生。
ある神社の前で肝試しをした。すると夕闇の中、和服美人がハイカーを誘惑しているのを見かける。一人の中学生がこっそりとその後をついて行くと、やがて二人は愛の行為をしだしたのだが…。
「峠の女」(7分)
昭和30年代、ミュージシャンSさんの父がバイクでの帰り道、和服姿の美女が道端にしゃがんでいるのを見かけた。声をかけてみるとどうやら足を怪我しているらしい。
彼女をバイクの荷台に乗せて峠を下ったのだが…。
「山の郵便配達」(9分)
ある郵便配達人。配達をしていてその日最後の手紙の住所がどうも覚えのない場所だった。あたりをつけて行ってみると確かに立派な一軒家がある。中から和服美人が現れ、中へ入るように誘ってくる。思わぬ誘惑に負けて中へ入ってみると…。
「いぬ」(8分)
動物が喋るとなると、妖怪に一歩近づくのだろうか?
ある主婦が掃除をしていると、飼っていた老猫がむっくり起き上がり…。
「猫石」(7分)
中山本人の体験談。庭の選定師の方を取材していた時、それなら面白いものがあるからと、ある場所へ連れて行ってもらったことがある。ある家の庭に、なんと猫の顔と思しき石があり…。
「バスの運転手」(16分)
ある女性の父は会社役員。休みの日には必ずゴルフに出かける。
ところがある晴れた日曜日の午後、その日は珍しく父が家にいた。その理由を聞けば「どうも、キツネに騙されたみたいや」と、今朝あった不思議な体験を話し出した。
「お囃子」(5分)
ある人が子供の頃の夏休み。実家に帰省し、祖父、祖母とともに庭で花火をしようとしたことがあるという。日は落ち、裏山には提灯行列が見える。「じいちゃん、今日、お祭りなんか?」と聞くと、祖父は「よお見てみいや」と言った。
彼はもう一度その行列をよく見てみると、それはなんとも不思議なものであった。
「お地蔵さんのある風景」(6分)
九州地方にサイクリングに行った男性3人。夕闇迫る中、まっすぐ伸びる畦道を自転車で走っていくのだが、なぜか同じ風景が繰り返されている。
いったん休憩をして、3人はあることを試してみたのだが…。
「比叡山 〜キツネが人を騙すメカニズム」(31分)
ある漫画家さんが同じような体験をしていると聞いた。
それは京都府と滋賀をまたぐ比叡山でのこと。タクシーで山を下っていると…。
本当にキツネは人を化かすのか、それともそれは医学的、精神的な作用として説明できるものなのだろうか?ここに大胆な仮説を試みてみる。
「神社のキツネ」(4分)
ある人の子供の頃の話。夏祭りを控えた神社で太鼓の練習が始まった。そこに、一匹のキツネが姿を現す。よく見てみると、そのキツネの容姿が少し変わっていることに気がついた子供たちが騒ぎ出した。
「キツネ越え」(3分)
山形県にキツネ越えという道がある。まっすぐな一本道なのにトラブルが多い。水平に見えているけど実は坂道だからか。
そう思っていたある女性、キツネ越えを自転車で通って不思議な体験をしたという。
「キツネ風呂」(6分)
ある山道を車で運転している時に睡魔に襲われた男性。車を路肩に停め、少し仮眠をとろうと目を閉じた。しかし目を覚ますと、何故か知らない家の風呂場のバスタブの中にいて、そこにその家の奥さんと思しき人が入ってきて…。
「ハイキングコース」(5分)
数人の若い女性が、ある山のキャンプ場でバーベキューを楽しんだ、その帰りの事。
道案内の通りに山を下って、すぐにも電車の駅が見えてくるはずなのだが一向に辿り着かない。そこに老人が現れ…。
「小さな温泉」(5分)
Sさんが学生の頃、友人たちと紀伊半島を一周するドライブに出かけたことがある。
道中にマジックで「温泉」と書かれた案内板を見かけた彼らが興味深々で行ってみると、確かに小さな温泉があった。彼らは裸になってその温泉に浸かったのだが…。
「獣の臭い」(2分)
ある会社員が、深夜、神保町でタクシーを拾った。
さっそく乗り込んだが「お客さん、動物乗せちゃだめですよ」と運転手に言われた。
「そんなもん乗せてねえよ」。いや…。
中山 市朗(なかやま いちろう) プロフィール
作家、怪異収集家
1982年、大阪芸術大学映像計画学科卒業。映画の助監督や黒澤明監督の『乱』のメイキングの演出などに携わる。
1990年、扶桑社から木原浩勝との共著で『新耳袋〜あなたの隣の怖い話』で作家デビュー。『新耳袋』はそれまでただ怪談で括られていたものから、実話だけにこだわり百物語を一冊の著書で実現化させた。
『新耳袋』は後にメディアファクトリーより全十夜のシリーズとなり復刊。『怪談新耳袋』として映画やドラマ、コミックとして展開。
Jホラーブームを作った作家や映画監督に大きな影響を与え、ブームをけん引することになる。
著書に『怪異異聞録・なまなりさん』『怪談実話系』『怪談狩り』シリーズなどがある。
怪談は語ることが重要と、ライブや怪談会、放送などでも積極的に怪談語りを行っている。その他の著書に『捜聖記』『聖徳太子・四天王寺の暗号』『聖徳太子の「未来記」とイルミナティ」など多数。
|