内容紹介
漢字一つ一つが持つ個性的な形と意味、それらの組み合わせからさまざまにひろがってゆく境地が幻想的でもあり、夢のようでもある「ファンタスティック」な漢詩。
時代背景や作者の境遇を交えた色彩豊かな漢詩の魅力に溢れる講義です。
漢詩は和歌や俳句とともに、永く日本人に親しまれて来た文学形式ですが、漢字ばかりで作られるため、気おくれしてしまう人もおられるようです。
が、そのいかめしい外見から一歩中に入ってみると、まことに多彩で魅力ある世界が現れて来ます。
それは或る種の果物に似ています。西瓜(スイカ)の、あの固い緑色の外皮の中には赤くジューシーな果肉が、また荔枝(ライチ)の、あの固いトゲだらけの、茶色の外皮の中には、丸くて白く、甘い果肉が包まれています。
このシリーズは、漢詩のそのような果実をなるべくわかりやすくお伝えするもので、名作の数々を、時代背景や作者の境遇と合わせてお話ししてゆきます。
漢字一つ一つが持つ個性的な形と意味、それらの組み合わせからさまざまにひろがってゆく境地は、まさしくファンタステイック!と言えるでしょう。
〈第十七回 蜀よ さらば〉
成都の混乱がいくぶん収まり、杜甫一家が浣花草堂に戻ったのは広徳2年(764)、杜甫53歳の秋でした。五言絶句「絶句二首」は草堂に帰って間もなくの作。「其の一」はうららかな春の昼の情景を対句形式で描き、「其の二」は、春景色をよそに、いつになっても北へ帰れない悲しみを訴えています。
永泰3年(765)、杜甫の随一の庇護者であった厳武が急逝、杜甫一家はそれを機に、五年半のあいだ生活した草堂を出、またもや旅の境遇となります。そしてこれは、杜甫にとって最後の旅路となりました。五言律詩「蜀を去る」は、その直前の作。自分の老衰を認め、朝廷のことは大臣たちに任せよう、と言っています。同じく五言律詩「旅夜書懐」は、長江を下る途中での作。夜景を眺めながら、思いどおりにゆかない我が人生を嘆いています。
収録作品
絶句二首 其一 五言絶句
絶句二首 其二
去蜀(蜀を去る) 五言律詩
旅夜書懐 五言律詩
特典ダウンロード
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各回の収録作品を掲載した「ファンタスティック!漢詩ワールド」ミニテキスト(PDFデータ)
をプレゼントいたします。
※商品版の音声と一緒にダウンロードいただけます。
講師:宇野直人(うの・なおと)
昭和二十九年、東京生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了、文学博士。現在、共立女子大学国際学部教授。著書に『中国古典詩歌の手法と言語』(研文出版)『漢詩の歴史』(東方出版)『漢詩の事典』(共著、大修館書店)など。平成十九年、NHKラジオ「古典講読――漢詩」講師、平成二十年より同「漢詩をよむ」講師。
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