内容紹介
漢字一つ一つが持つ個性的な形と意味、それらの組み合わせからさまざまにひろがってゆく境地が幻想的でもあり、夢のようでもある「ファンタスティック」な漢詩。
時代背景や作者の境遇を交えた色彩豊かな漢詩の魅力に溢れる講義です。
漢詩は和歌や俳句とともに、永く日本人に親しまれて来た文学形式ですが、漢字ばかりで作られるため、気おくれしてしまう人もおられるようです。
が、そのいかめしい外見から一歩中に入ってみると、まことに多彩で魅力ある世界が現れて来ます。
それは或る種の果物に似ています。西瓜(スイカ)の、あの固い緑色の外皮の中には赤くジューシーな果肉が、また荔枝(ライチ)の、あの固いトゲだらけの、茶色の外皮の中には、丸くて白く、甘い果肉が包まれています。
このシリーズは、漢詩のそのような果実をなるべくわかりやすくお伝えするもので、名作の数々を、時代背景や作者の境遇と合わせてお話ししてゆきます。
漢字一つ一つが持つ個性的な形と意味、それらの組み合わせからさまざまにひろがってゆく境地は、まさしくファンタステイック!と言えるでしょう。
〈第二回 洛陽から長安へ〉
杜甫は二十四歳で科挙に落第したあと斉・趙(山東・河北省)を歴遊、三十歳のとき洛陽に帰り、楊氏の娘を妻に迎えます。その後、三十代前半で斉・魯(河南・山東省)をめぐり、三十五歳のとき都長安に出、貴顕の人々の社交界に出入りします。その間、三十三歳のとき洛陽(もしくは東魯)にて、都を追放されたばかりの李白と出会い、以後三年ほど彼と行動を共にしました。
五言律詩「房兵曹の胡馬の詩」は、知人房氏が所有する西域産の名馬をほめたたえたもの。杜甫の観察眼の鋭さと、それを表現する造句力の巧みさがきわ立っています。七言古詩「飲中八仙の歌」は三十五歳で長安に出た直後の作。当時の都でよく知られた愛酒家八名の酔態を、伝聞も交えておもしろく描き出しています。七言絶句「李白に贈る」は、敬愛する大詩人李白と旅行中の作。李白の不遇を案じるとともに、なかなか活路を見いだせない自分自身をも憐れんでいます。
収録作品
房兵曹の胡馬の詩(房兵曹胡馬詩) 五言律詩
飲中八仙歌(飲中八仙の歌) 七言古詩
贈李白(李白に贈る) 七言絶句
特典ダウンロード
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をプレゼントいたします。
※商品版の音声と一緒にダウンロードいただけます。
講師:宇野直人(うの・なおと)
昭和二十九年、東京生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了、文学博士。現在、共立女子大学国際学部教授。著書に『中国古典詩歌の手法と言語』(研文出版)『漢詩の歴史』(東方出版)『漢詩の事典』(共著、大修館書店)など。平成十九年、NHKラジオ「古典講読――漢詩」講師、平成二十年より同「漢詩をよむ」講師。
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