内容紹介
漢字一つ一つが持つ個性的な形と意味、それらの組み合わせからさまざまにひろがってゆく境地が幻想的でもあり、夢のようでもある「ファンタスティック」な漢詩。
時代背景や作者の境遇を交えた色彩豊かな漢詩の魅力に溢れる講義です。
漢詩は和歌や俳句とともに、永く日本人に親しまれて来た文学形式ですが、漢字ばかりで作られるため、気おくれしてしまう人もおられるようです。
が、そのいかめしい外見から一歩中に入ってみると、まことに多彩で魅力ある世界が現れて来ます。
それは或る種の果物に似ています。西瓜(スイカ)の、あの固い緑色の外皮の中には赤くジューシーな果肉が、また荔枝(ライチ)の、あの固いトゲだらけの、茶色の外皮の中には、丸くて白く、甘い果肉が包まれています。
このシリーズは、漢詩のそのような果実をなるべくわかりやすくお伝えするもので、名作の数々を、時代背景や作者の境遇と合わせてお話ししてゆきます。
漢字一つ一つが持つ個性的な形と意味、それらの組み合わせからさまざまにひろがってゆく境地は、まさしくファンタステイック!と言えるでしょう。
〈第1回 大志ありて〉
杜甫の家は官僚の家で、父の杜閑は地方官を歴任、母の崔氏は唐の王室の親族でした。
杜家は洛陽の近くにあり、杜甫が生まれたのは、ちょうど玄宗皇帝即位の年。彼は東都洛陽のはなやぎを身近に感じつつ、唐王朝の最盛期の空気を存分に吸って成長したと言えるでしょう。十九歳のころから呉・越(江蘇・浙江省)を訪れて見聞を広め、二十四歳のとき科挙の進士科を受けたものの落第、以後、官職の手づるを求めて各地を歴遊することとなります。
彼の詩は二十代中ごろからのものが残されています。まず五言律詩「岳(がく)を望む」は二十六歳の作で、有名な泰山(たいざん)の雄姿にわが志を重ね合わせた雄渾な詩。ついで三十歳のころの五言律詩「画鷹(がよう)」は、鷹の絵を見て触発された感慨を述べ、やはり、力強く描かれた鷹の姿に、世に雄飛する自分の姿を重ねています。同じころの五言律詩「夜 左氏の荘に宴す」は、左氏の別荘での夜宴のようすを時間の流れに沿って詠んでいます。
収録作品
望岳(岳を望む) 五言律詩
画鷹(がよう) 五言律詩
夜宴左氏荘(夜 左氏の荘に宴す) 五言律詩
特典ダウンロード
ご購入のお客様への特典として、
各回の収録作品を掲載した「ファンタスティック!漢詩ワールド」ミニテキスト(PDFデータ)
をプレゼントいたします。
※商品版の音声と一緒にダウンロードいただけます。
講師:宇野直人(うの・なおと)
昭和二十九年、東京生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了、文学博士。現在、共立女子大学国際学部教授。著書に『中国古典詩歌の手法と言語』(研文出版)『漢詩の歴史』(東方出版)『漢詩の事典』(共著、大修館書店)など。平成十九年、NHKラジオ「古典講読――漢詩」講師、平成二十年より同「漢詩をよむ」講師。
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