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「馬鹿者めがッ、この三日月形の傷痕はどうした時に出来たか存ぜぬかッ」
江戸八百八町においてその名を知らぬ者のない、
旗本退屈男と異名をとった直参旗本、早乙女主水之介のチャンバラ活劇オーディオブック。
禄は直参旗本の千二百石、屋敷は本所長割下水、剣の奥義は諸羽流正眼崩し、武芸十八般に通ずる無双な腕力、
にもかかわらず江戸の天下は腹の立つ程な泰平ぶりを示し、腕を振るうべき戦乱もなく、ために栄達もなく、
故にこの人の世が、否生きている事すら迄が、退屈で退屈でならない退屈男。
清廉潔白な性格で、権力の腐敗を憂い、一方で庶民に慈悲深く、「長割下水のお殿様」とも慕われる退屈男。
「旗本退屈男」は、1930年以来、計30本の映画が製作され、
テレビドラマとしても何度もリメイクされている、時代小説家・佐々木味津三による人気時代小説。
江戸の天下で繰り広げられる退屈男の痛快な「退屈払い」を、
一人十役変幻自在の声色でオーディオブック化!!
「ほほう、これは少々退屈払いが出来そうじゃわい。 ―退屈男」
小気味のいい男の小気味のいいオーディオブックは、これから始まるのです。
旗本退屈男 〜第四話 京へ上った退屈男〜 |
少しばかり人を斬り、足のむくままの行き着いた、青葉が香る京の町。 都の風情に浸る折、耳にしたのは異な言葉、こはそもまさに怪事件への入り口でした。
小判の力の威を借りて、世間も人も甘く見る、京の数珠屋のお大尽。
金子に憑かれた悪人の、不埒を働く企みに、江戸旗本の気ッ腑を振るう、 「どこまで不埒働こうという所存じゃッ。 無辜の良民の命縮めて、上役人の掟が立つと思うかッ。 神妙にせい!いずれも一寸たりとそこ動かば、 早乙女主水之介が破邪の一刀忽ち首に下ろうぞッ」 静かに呟きながら、愛用の一刀を音もなく抜き払いました。 刹那!何ともどうももう仕方がない。 ひとたびわが退屈男の腰なる秋水が鞘走ったとならば、 何ともどうももう仕方がないのです… |
※本作品は発表時の未熟な時代背景から、今日の社会では一般的でなく、 不適切と思われる表現が含まれている箇所がございます。 しかし作品のオリジナル性を最大限に尊重し、 なるべく当時のまま忠実に再現することを優先いたしました。
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