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戦時下という過酷な環境の中、あぶり出される人間の本性。
人間とはどのような生き物なのか。そしてどのように生きていくべきなのか。
無頼派の旗手・坂口安吾の代表作『白痴』のオーディオブックです!
舞台は戦時下の東京──
ある日、伊沢は帰宅してみると、押入れの中に、
隣家に暮らす白痴の女が隠れていることに気づく。
そして困惑しつつもその白痴の女を自分の家に囲うことに…。
迫り来る米軍機。空襲──
どのような状況下にあっても、人は生きていくかぎり、
孤独と肉欲の螺旋から逃れることはできない。
人は他者と真の意味で理解し合うことはできるのか…?
爆撃により炎に包まれる街。その中を白痴の女とともに逃げまわる。
女を置いて立去ることもできたが、それすらも面倒く感じる。
人が物を捨てるには、たとえば紙屑を捨てるにしても、捨てるだけの
]張合いと潔癖ぐらいはあるだろう。白痴の女に対し、微塵の愛情もなかったし、
未練もなかったが、捨てるだけの張合いもなかった…。
たとえば女を捨ててみても、どこかの場所に何か希望があるのだろうか。
何をたよりに生きるのだろうか…。
人は、なんと愚かで、そしてなんともの悲しい生き物なのか。
しかし、それでも人は生きていかねばならない。
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※ 本作品は発表時の時代背景により、今日の社会では一般的でなく、 不適切と思われる表現が含まれている箇所がございます。しかし作品の オリジナル性を最大限に尊重し、当時のまま忠実に再現することを優先いたしました。 |
■坂口安吾(さかぐち・あんご)
小説家。新潟市西大畑町に生まれる。
幼稚園の頃より不登校になり、餓鬼大将として悪戯のかぎりを尽くす。
1926年、求道への憧れが強まり、東洋大学印度哲学科に入学するも、
過酷な修行の末、悟りを放棄する。1930年、友人らと同人雑誌「言葉」を創刊。
1946年、戦後の本質を鋭く把握洞察した『堕落論』『白痴』の発表により、
一躍人気作家として表舞台に躍り出る。戦後世相を反映した小説やエッセイ、
探偵小説、歴史研究など、多彩な執筆活動を展開する一方、国税局と争ったり、
競輪の不正事件を告発したりと、実生活でも世間の注目を浴び続けた。
1955年、脳溢血により急死。享年48歳。
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