漢語調ことばにご用心
【あらすじ】
大家に縁談を持ちかけられた八五郎。相手の娘は、年は十八で器量良し、嫁入り道具もそろっていると聞き、大喜びします。しかし、どうも話がうますぎます。どこかにキズがあるのではないかと心配する八五郎に大家が言いました。「じつは言葉づかいがていねいすぎる」。そんなことなら構わないと、嫁にもらうことに決めました。その晩、大家さんはお嫁さんを連れてくると、用事があるからと、さっさと帰ってしまいました。女房になる人の名前も知らないことに気付いた八五郎が名をたずねます。すると、「ミズカラコトノセイメイヲトイタモウヤ? ソモワガチチハヤマトノサムライ……」。お嫁さんの言葉づかいは、言っている意味が分からないほどていねいなのでした。
【聴きどころ】
「けさは風が強くて歩きづらいですね」というなんでもない挨拶も、このお嫁さんにかかれば「コンチョウハドフウハゲシウシテ、ショウシャガンニュウシ……」ということになってしまいます。過剰にていねいで大げさなお嫁さんのことばを、遊一さんは芝居がかった口調で好演。また「チンチロリンのポーリポリ」と、新妻との生活を想像する場面では、遊一さんらしい若々しさで妄想を暴走させています。
【もうひと言】
漢語調の言葉のチンプンカンプンさを楽しむのがこの噺。ですからお嫁さんの言葉の意味が分からなくてもまったく問題ありません。ただ、サゲは現代ではあまり使われない言葉なので、少々分かりにくいかも知れません。ここでは「書状などの終わりに用いる語句である」とだけ記しておきましょう。
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