女の意地でぶら提灯が行ったり来たり
【あらすじ】
さる大家の旦那は妾を囲っています。しかし本妻は出来たひとで、ある風の強い晩にこう切り出します。「むこうはばあやと二人きりで心細いでしょうから行っておあげなさい」。そうか、と旦那は家を出ます。提灯持ちの権助とともに妾の家にたどり着きますと、妾は果報が身に余るといいながらも「ここでお泊めしてはものの分からない女になってしまいます」と旦那を家に帰します。家に帰れば帰ったで、本妻は「いったんお出ししたんですから今晩は二度と入れるつもりはない」とまたまた旦那を送りだします。権助は提灯をつけたり消したり大忙し。ふたつの家を行き来する旦那と権助なのでありました。
【聴きどころ】
妾と本妻は、表面的にはやきもちを焼かないふたりの女性として描かれています。しかしお互いへの気づかいが、いつしか女の意地の張り合いへと発展していくさまは、やきもちの裏返しの感情なのかも知れません。そんな微妙な女同士の心理戦を、菊六さんはじわじわと盛り上げて笑わせます。田舎者で歯に衣着せぬ権助の、みごとな狂言回しぶりにも注目です。
【もうひと言】
江戸ではもともと権助は個人名というよりは、商家の使用人、とくに飯炊き男の総称でした。落語では田舎者の使用人として数々の噺に登場する名わき役のひとりです。当サイトでは「こんにゃく問答」などで権助の活躍をおたのしみいただけます。
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