五重塔のてっぺんから決死のジャンプ
【あらすじ】
ご隠居のところにやってきた男は、まともにはたらいている様子がありません。ご隠居がたしなめると、ちゃんともうけ話を考えているといいます。たとえば、スズメを捕まえて焼き鳥屋に売る計画。これはみりんに浸けた米と落花生、ほうきとちり取りでスズメを捕まえようという都合のよいもので、ご隠居をあきれさせます。さらに奇想天外な計略を練ったこの男、不忍池のサギを捕まえようと試みます。おどろいたことに男の計略はまんまと成功し、池中のサギを一網打尽にしてしまったのでした。そこまでは良かったのですが、そのあと男の身には、荒唐無稽な事件が待ち受けていたのです。
【聴きどころ】
毎度ばかばかしいおはなしで……というのは落語の常套句ですが、この噺はばかばかしさを通り越して、もはやシュール。スズメを酔わせて捕まえる方法や、「さーぎぃー」という呼びかけでサギを捕まえようという作戦も荒唐無稽なら、その結果ふりかかる災難も輪をかけて荒唐無稽なものになっています。そんな“あり得ない”作戦をひょうひょうと演じてのけるわか馬さん。「さーぎぃー」の声のすばらしさに聞きほれていただきたい一席です。
【もうひと言】
もともとは上方由来の噺。「鷺」を「雁」に置き換えた「雁とり」のバージョンもあります。本話に出てくる雀を捕まえる方法は「湯屋番」で若旦那が楽して儲ける方法を語る場面でもよく用いられます。雀とりのはなしは昔話にも多く伝わっていて、雀を酔わせるのに酒粕を用いたり、ツバキの葉で雀を巻き取ってしまう話もあるようです。
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