自転車撤去をめぐる不条理劇
【あらすじ】
学生の吉田君、三軒茶屋の駅前にとめてあった自転車を撤去されてしまい、区の管理場にとりに行きます。そこには態度の悪い山本、反対にやたらと腰の低い竹井という二人の職員がいて、目の前で言い争いを始めたりしてさっぱり要領を得ません。二人に翻弄されつつも自転車をとり戻して家に帰ってくると、就職の決まった区役所から通知が届いています。そこにはなんと「自転車撤去管理場主任を任命する」と書かれていました。あのへんてこな管理場が自分の職場になってしまったのです。次の日から管理場に出勤し、二人の職員にあらためて挨拶すると、昨日は腰の低かった竹井の態度が豹変します。
【聴きどころ】
人々に決して良い感情を持たれない「自転車撤去管理場」。あまつさえ、その管理場には職員が二人しかいないのに「派閥」があるという不条理で難儀な職場です。そこに新しく加わった若い吉田君はどちらに所属するかを迫られて悩みます。当人たちは真剣なのですが、傍からみれば滑稽なお役所の有様が描かれていて、シニカルなおかしみがあります。吉田君が選んだ苦肉の策と、それに続くサゲには今の都会の日常を感じさせる、ギャグが効いています。
【もうひと言】
普通の人があまり気にも留めない、どうでもいいような日常を切り取って、一編の噺に仕上げるにはきく麿さん独特のスルドイ観察眼が生きているようです。きく麿さんのブログもビミョーな脱力感に満ちています。http://blog.kikumaro.com/
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