おぼろ月夜の呑気な出来事
【あらすじ】
独り者の権兵衛さんが夜になって寝ていると、どんどんと扉を叩き「権兵衛、権兵衛」と呼ぶ声がします。一体誰がこんな夜更けに来たんだろうと、扉を開けてみると誰もいません。よくよく思案してみると、どうやらこれは狸のいたずらだということが分かりました。そこで一計を案じた権兵衛さんが、このいたずら狸を捕まえます。村人はこういうたちのよくない狸は狸汁にして食べてしまおうと提案しますが、権兵衛さんは今日は亡くなった父親の祥月命日なので、殺生はしたくないと言います。とはいえ、この狸をそのまま放っておくわけにもいきません。そこで権兵衛さんは狸を懲らしめるために、狸の頭を剃ってしまい……。
【聴きどころ】
窓輝さんは落語ファンなら御存知の通り、円窓師匠の息子さんという落語界のサラブレッド。御当人は噺家には珍しい(?)イケメンなのですが、さすが噺家の二世だけあって独特のフラ(生まれ持ったおかしみ)があります。この一見民話のような素朴な噺にも、そんな窓輝さんの語り口がぴったりと合っています。
【もうひと言】
この噺の中では敢えて説明されていませんが、江戸時代には頭を丸めるというのは懲罰の意味が込められていました。ですから、悪事を働いた狸の頭を剃るのは、当時の時代感覚からすればごく普通のことでした。落語は与太話ばかりだと思われがちですが、意外とこういう細かいところできちんとした時代考証を行っているのです。
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