わんこ、シューカツする。(落語随談付き)
【あらすじ】
蔵前の八幡様の境内に白犬が住んでいます。真っ白な犬は人間に近いという言い伝えから、この犬も「おまえは生まれ変わったら人間になるよ」と参拝客に可愛がられるので、すっかりその気になって、人間になりたいと八幡様に願掛けします。二十一日目の満願の当日、願いが叶って毛が抜けて人間になったものの、気がつくと素っ裸。とりあえず手ぬぐいを腰に巻きましたが、犬時代のように寝ているわけにはいきません。働かなくてはと思案にくれていると、口入れ屋の上総屋の旦那が通りかかります。裸同然の若者を見てびっくりした旦那は悪い奴に身ぐるみはがされたんだろうと不憫に思い、家に連れ帰ります。ふんどしも締めたことがなく、帯を出せばくわえてぐるぐる回る若者の奇行には呆れますが、変わり者の奉公人を探しているご隠居を世話することにします。
【聴きどころ】
就職活動する犬って……。なんとも不思議な趣の噺です。はいつくばったり猫に唸ったり、犬には普通でも、人間では奇行になってしまいます。そのふるまいを大げさにやりすぎると気味が悪い噺になりかねませんが、犬ならぬ馬石師匠が白犬の健気で正直な様子を明るい声でうまく表現しています。
【もうひと言】
荒唐無稽のようですが、犬でも一心に願えば、人間に生まれ変わることができる…転生を題材にした寺方の説教が噺のもとになっているようです。古今亭では志ん生、志ん朝などが得意にしてきました。馬石師匠もこの流れを汲んでいるようです。
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