床屋にて。つれづれなるままに日暮らし……。
【あらすじ】
床屋で若い衆が暇をつぶしています。ある者はめちゃくちゃな将棋を指していたり、ある者は字も読めないくせに本を読んでいたり、またある者は「宇治の蛍踊り」と称する、上品そうですがその中身は恥ずかしいほど下品な踊りを披露しようとしてひんしゅくを買ったりします。そのなかで平然と寝ている半公を無理やり起こしてみると、起きたとたんに「俺みてぇに女にもてると昼間眠くってしょうがねえ。もてねえ国に行きてぇ!」とのろけです。よくよく聞くと、芝居小屋でいい女と知り合います。意気投合して茶屋の二階で盃をやったりとったりするうちに呑みすぎて頭が痛くなってきました。次の間には布団が敷いてあります。床につくと、そこに女の白い足が入ってきて…なまめかしい成り行きにまわりの者たちは色めき立ちます。
【聴きどころ】
はっきりとした筋があるわけでもないのですが、登場人物も多いので描きわけがたいへんです。将棋、読書、隠し芸など前半の部分は演者によって演出に個性が出て、その違いを味わうのもこの噺の楽しみのひとつです。好二郎さんは本読みや踊りのシーンでしっかり笑わせてくれます。特徴的な力強い声も好二郎さんの魅力です。
【もうひと言】
のろけの部分で話を切るのが一般的ですが、本来のサゲは現在ではちょっと分かりにくい、畳に引っかけたものでした。江戸時代の床屋は町内の社交場でした。噺では若い連中が他愛もなく騒いでいますが、床屋は現在でも何となく気分が緩む場所かもしれません。好二郎さんはこの秋真打ちに昇進されます。新しい芸名は三遊亭兼好。
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