真夏の夜の夢 (落語随談付き)
【あらすじ】
戸塚宿から一里ほど入った鎌倉山のふもとのあるお寺。和尚と寺男の二人でつましく日々を送っています。和尚は畑仕事で茄子を丹精しています。夜、和尚の蚊帳の傍に美しい女が現れました。「私は茄子の精です。大きくなったらわしの妻にしてやると声をかけていただいたので……」「菜(さい)」と「妻(さい)」を間違えていたわけですが、和尚はせっかく出てきてくれたものをむげに断ることもなかろう、肩でも揉んでくれと蚊帳の中に招き入れます。ところがそれまで気配すらなかったのに、一天にわかにかき曇り、つんざくような落雷の音…
【聴きどころ】
不思議な噺です。主人公は出家の身、しかも相手が茄子。どこかファンタジックな感じすらあります。扇辰師匠の師匠・扇橋師もよく高座に掛けていますが、扇辰師は師匠ゆずりの淡々とした語り口ながら、噺をくずさない程度に軽くクスグリを入れてお客を笑わせます。このような古い江戸落語の趣がある噺が引き継がれていくのは嬉しいかぎりです。
【もうひと言】
武藤禎夫『定本落語三百題』(岩波書店)によると「今昔物語」巻二六の「都から東方に下る男が、道中で急に性欲がおこり」という話がもとになっているということです。
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