マメでそそっかしい VS ズボラでそそっかしい
【あらすじ】
そそっかしい男。浅草観音の行き倒れを長屋のとなりに住む熊さんだと思い込み、あわてて戻ったところが、死んだはずの熊はピンピンしています。そんなことはお構いなしに、男は熊に「お前は死んだんだ」と言い聞かせ、行き倒れのところへと連れてもどります。熊は熊でこれまたそうとうのおっちょこちょいで、行き倒れの顔を検分するうちに、それが自分にちがいないと納得してしまうのでした。ふたりはなきがらを引き取ることにして運びはじめますが、ふと、熊のあたまには、ある疑問がわき起こるのでした。
【聴きどころ】
落語ではおなじみの粗忽者ですが、小円楽師も「マメでそそっかしいのとズボラでそそっかしいのがある」と指摘するように、登場人物ふたりの粗忽ぶりは対照的です。行き倒れを熊と間違えた男はうっかり者のあわてん坊で、いったんこうと思い込んだら、もはやきく耳もたないタイプ。一方の熊は終始ぼんやりとして、自分が死んだかどうかの判断すらつきません。そんなそそっかしさ二態をみごとに演じ分けたのが小円楽師。トントントンとリズムの良いはなしっぷりで、一気に聞かせる一席です。
【もうひと言】
「粗忽の釘」「粗忽大名」「粗忽の使者」……。“粗忽”を主題とする落語は数あれど、「粗忽長屋」ほどの粗忽者には、なかなかお目にかかれません。まさに粗忽の真骨頂ともいえる噺です。生きている人間を死んだと思ってしまうおなじ趣向の噺としては、ほかに「永代橋」があります。
|
この商品の著者による商品一覧: 三遊亭小円楽