いまでも迫力、金髪・グラサン・キャデラック。
【あらすじ】
金髪サングラスのアメリカかぶれの元若者が、30年ぶりに現れました。ひざが硬くなって昔のようにヤンキー座りもできませんし、オシッコの切れも悪くなりましたが、こころは今も不良少年。むかしを振り返れば、原宿の喫茶店レオンに不良のあこがれ岩城滉一がいたこと、キャンディーズのランちゃんのかわいさなどが、なつかしく思い浮かぶのでした。しかし意外にも現在の女性の趣味はエビちゃん。自慢のキャデラックを走らせて、原宿の町でエビちゃんのナンパに成功します。真っ暗な海の音を聞きながらいい雰囲気となり、ふたりはいつしかホテルへと向かいます。しかしロマンチックなのはここまで。話は一転、とんでもない劇画の世界へと突入するのでした。
【聴きどころ】
金髪にサングラスで高座に上がるや座布団を飛ばし、あげくの果てにはうんこ座り。傍若無人の振る舞いから実験落語の精神がほとばしる一席です。また30年ぶりにしん平師の中から抜け出てきたというこの不良が現在のしん平師を評して、「古典落語家に帰ろうとしてるんじゃないか?」などと自己挑発するところもスリリングです。
【もうひと言】
喫茶レオン、クールス、キャンディーズ、8トラック、ロッキー・バルボア……。70〜80年代の風俗満載の一席は、当時青春時代を送られた方には、たまらない魅力を放つことでしょう。今回の30年ぶりの高座の後、また30年は封印されてしまうという本作を、お聞き逃しなさいませぬよう。
★「実験落語」は1970年代後半に渋谷ジァンジァンなどを舞台に繰り広げられた新作落語の会で、三遊亭円丈を中心に、柳家小ゑん、夢月亭清麿、林家しん平など当時の血気盛んな若手噺家たちが結集し、熱いムーブメントをつくりだしました。本作品は2007年8月18日に開催された「甦った! 伝説の実験落語特集」(「無限落語」第10回、お江戸日本橋亭)で収録されたものです。
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