さあ、ご存知「たらぁり、たらぁり」だよ、お立ち会い!(落語随談付き)
【あらすじ】
盛り場にはさまざまな見せ物や大道の商いが出ています。「さあ、ご用とお急ぎでない方はゆっくりと見ておいで」。なかでも威勢の良いがまの油売りは啖呵売(たんかばい)の代表格。「一枚が二枚、二枚が四枚、四枚が八枚……」。きょうも見事な口上で蛤の貝に入ったがまの油を売っております。ところがなかにはズボラな人もいたもので、お酒を飲んで仕事をはじめる強者がありました。酔っぱらっているから当然、口上は無茶苦茶の間違いだらけ。「四枚が八枚、八枚が十と六枚、十と六枚が何枚だ?」。揚げ句の果てにはしくじって、本当に刀で自分の腕を切ってしまいます。
【聴きどころ】
前段のがまの油売りは、立板に水のみごとな口上をやってのけます。それにひきかえ後段での口上は、酒に酔ってヘベレケの状態。しかし、ただ間違えるのでありません。がまの後ろ足が六本のはずが八本になったり、“筑波山”が“高尾山”になったりと、もともとの口上を知っているほど、その可笑しみも深まります。まずは前段の正調“がまの油売り”をじっくりとお聞きください。いっそのこと憶えてしまえば宴会芸としても一生ものです。
【もうひとこと】
中国医学ではがま(ヒキガエル)の分泌物を解毒薬や止血に用いたとい うことですから、がまの油売りの口上もあながち嘘ではないようです。しかし、実際に江戸で売られていたものは、ただの油に着色したようなインチキも多かったとのこと。しかし、それを売るのががまの油売りの腕の見せ所で、客もそれを分かった上で、その芸に対してお金を払うというわけです。
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