近頃息子のいうことにゃ…(落語随談付き)
【あらすじ】
芝居小屋にかかっていた「近日開演」の札を見て、「近日」を明日だと間違えてしまうような間の抜けた息子。あきれた親父が「少しは気を利かせろ、なんでも先へ先へと頭を働かせろ」と説教しますが、「分かったよ。今晩は明日の朝飯まで食う」という始末。言い聞かせているうちに「もう頭が痛くなってきたよ!」という親父を見て、さっそく気を利かせたつもりで医者を呼び、葬儀社まで手配して、家に白黒の幕が張られ忌中の札がかかってしまいます。その様子を見ていた町内のこれまたあわて者が「隠居が死んだ」と大騒ぎ、みんなを呼び集めて悔やみを言いに出かけますが…。
【聴きどころ】
バカ息子と親父のやりとりだけでなく、町内の連中のなんともばかばかしい言い争いも聞きどころ。「町内の若い衆」の騒ぎはたくさんの噺に出てきますが、どうでもいいようなことで青筋立てて怒りまくる喜多八師匠の語り口は、ご本人のテンションが高いだけに、なおさら笑いを誘います。
【もうひと言】
この頃では、家屋敷に「忌中」の札が貼られているのを見ることもほとんどなくなりましたが、この噺のドタバタは現在でもありそうな光景です。もとは江戸小咄「忌中」「手廻し」などが原型といいます。江戸の昔から、親父と息子の二人暮らしは苦労が多いのかもしれません。
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