内容紹介
ロシアを代表する文豪が贈る、心を照らす文学の灯火。
この「トルストイ民話集」は、「戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」なので知られるレフ・トルストイが、ロシアに古く伝わる民話や伝説を材に取った改作群を集めた作品集です。
トルストイの道徳観・宗教観の結実したこの作品集は、巧妙な言葉選びと隙のない構成の中に分かりやすくその哲学が織り込まれています。
重厚なロシア文学に気軽に触れることが出来るこの作品は、素直に優しい心になれる、心の癒しとなることでしょう。
「人は何で生きるか」
一人の貧しい靴屋が礼拝堂の壁にもたれた素っ裸の男を拾った。その男、ミハイルは、綺麗な体と優しくかわいらしい顔をしているが素性を明かさない。靴屋の家に引き取った後、ミハイルは何処へも出ず、余計な口も利かず、寡黙に仕事をこなし、5年経っても笑顔をたった2度見せただけだった。ある日、客として来た婦人と2人の女の子の話を聞いて、ミハイルは3度目に笑った。そして婦人達が暇を告げた後、ミハイルは自分がやって来た理由とその素性を靴屋の家族に語り始めるのだった……
「愛のあるところに神がある」
靴屋のマルティンは最愛の妻を、病気のために早くに亡くし、残された一人の息子と二人で生活していたが、その息子も病気のために死んでしまった。そのためにマルティンはすっかり生きる望みを失ってしまった。
ある日、いつものようにマルティンが仕事をしていると、入り口から見かけたことのない老人が入ってきた。不思議なことに、マルティンはその老人に自分の受けた不幸を話し、自分は何のために生きているのかわからない、神様なんかいないと語ってしまう。老人はマルティンの話を泣きながら聞いて聖書を一冊残し、「これを毎日読み、神様にお祈りするといい」と教えた。マルティンはそれから一生懸命に聖書を毎日読んで、神様が自分の元に来てくれるよう祈るようになった。
ある日のこと、遅くまで聖書を読んでいると、マルティンは確かに誰かの声を聞いたように思った。その声はこう言った。
「マルティン、マルティン! 明日は往来を見ていなさい。私が行くから」……
収録内容
人は何で生きるか1
人は何で生きるか2
人は何で生きるか3
人は何で生きるか4
人は何で生きるか5
人は何で生きるか6
人は何で生きるか7
人は何で生きるか8
人は何で生きるか9
人は何で生きるか10
人は何で生きるか11
人は何で生きるか12
愛のあるところには神がある
蝋燭
二人の老人1
二人の老人2
二人の老人3
二人の老人4
二人の老人5
二人の老人6
二人の老人7
二人の老人8
二人の老人9
二人の老人10
二人の老人11
二人の老人12
レフ・トルストイ
ソ連(ロシア)の作家。ヤースナヤ・ポリャーナ生まれ。
幼くして両親を失い、カザン大学中退後、地主としての生活に入る。ルソーの影響を受け、1852年「幼年時代」で作家として第1歩を踏み出し、以後大作「戦争と平和」(1864〜1869年)、「アンナ・カレーニナ」(1873〜1876年)等多くの作品を残す。又、農民の生活改善と教育に情熱を燃やし、1859年農民子弟のための学校を開設する。19世紀ロシアを代表する巨匠で現代文明の批評家、人生の教師として世界の思想界に君臨する。他の作品に「イワンのばか」(1885年)などがある。非暴力主義者としても知られる。
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