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内容紹介山奥の貧困農村に暮らす竹中啓吉と娘りつ子。親子は瀕死の旅人・松山隆二を家で世話することにした。竹中と松山の会話から、宗教・人間の生き方への問いが浮かび上がる。山本周五郎が現代の宗教観と倫理観を世に問う、絶筆となった未完の物語。 竹中啓吉と十四歳になる娘りつ子は、福井県の山奥の涸沢をはさんだ谷合にある貧困農村に東京から移り住んでいた。苦しい山越えで行き倒れる旅人・松山隆二と出会い、家で世話をすることに。人を信じられず生きづらい東京を出てきたのに、村では宗教の対立や人同士のいがみ合いがあり失望する竹中。人間はぶつかりあってともに生きていくものだと考える松山。再婚してブラジルへ行こうとする父を嫌う娘りつ子。ある日、松山は東京に向けて旅立つが——。 山本周五郎(やまもと・しゅうごろ)1903〜67年。小説家。山梨の生まれ。本名・清水三十六(さとむ)。名は生まれ年からつけられ、筆名は東京で徒弟として住み込んだ質屋「山本周五郎商店」にちなんだ。20代前半に作家活動を始め、39歳の時『日本婦道記』が直木賞に推されたが受賞辞退。その後も多くの賞を固辞する。江戸の庶民を描いた人情ものから歴史長編まで作品は数多い。代表作には、「樅(もみ)ノ木は残った」「赤ひげ診療譚」「おさん」「青べか物語」「さぶ」などがある。1987年9月には、「山本周五郎賞」が新潮文芸振興会により設定された。 |
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