内容紹介
漢字一つ一つが持つ個性的な形と意味、それらの組み合わせからさまざまにひろがってゆく境地が幻想的でもあり、夢のようでもある「ファンタスティック」な漢詩。
時代背景や作者の境遇を交えた色彩豊かな漢詩の魅力に溢れる講義です。
漢詩は和歌や俳句とともに、永く日本人に親しまれて来た文学形式ですが、漢字ばかりで作られるため、気おくれしてしまう人もおられるようです。
が、そのいかめしい外見から一歩中に入ってみると、まことに多彩で魅力ある世界が現れて来ます。
それは或る種の果物に似ています。西瓜(スイカ)の、あの固い緑色の外皮の中には赤くジューシーな果肉が、また荔枝(ライチ)の、あの固いトゲだらけの、茶色の外皮の中には、丸くて白く、甘い果肉が包まれています。
このシリーズは、漢詩のそのような果実をなるべくわかりやすくお伝えするもので、名作の数々を、時代背景や作者の境遇と合わせてお話ししてゆきます。
漢字一つ一つが持つ個性的な形と意味、それらの組み合わせからさまざまにひろがってゆく境地は、まさしくファンタステイック!と言えるでしょう。
〈第一回 習作のとき〉
李白(701~762)、字(あざな)は太白(たいはく)。「詩仙」と呼ばれ、酒を好み、豪快奔放な詩風というイメージで語られます。しかし、その人生行路に沿ってていねいに作品を見てゆくと、彼の詩風や人間像はそれほど単純ではないことがわかります。
西域に生まれ、南西の蜀(四川省)で幼児期から25歳までを過ごし、以後求職の旅をつづけたものの官職に恵まれず、42歳でやっと得た朝廷の官職も、たった2年後に剥奪されてしまいます。以後はまた放浪の身、そして55歳の折に安史の乱に巻き込まれ、逆賊として流罪となり、恩赦を受け、また放浪の旅を続ける・・・史上に偉人多しと言えども、これほど激動の人生を送った人物もまれでしょう。
第一回の今回はまず導入として、そのような李白の生涯の大筋をたどり、続いてその最初期、十五歳の作とされる七言律詩「初月」「望夫石」を取り上げます。これら最初期の作品にも、李白の詩風の特色である、‟月、伝説への嗜好、女心に寄り添う姿勢”が見られるのは、興味を引きます。
収録作品
初月(しょげつ) 五言律詩
望夫石(ぼうふせき) 五言律詩
特典ダウンロード
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各回の収録作品を掲載した「ファンタスティック!漢詩ワールド」ミニテキスト(PDFデータ)
をプレゼントいたします。
※商品版の音声と一緒にダウンロードいただけます。
講師:宇野直人(うの・なおと)
昭和二十九年、東京生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了、文学博士。現在、共立女子大学国際学部教授。著書に『中国古典詩歌の手法と言語』(研文出版)『漢詩の歴史』(東方出版)『漢詩の事典』(共著、大修館書店)など。平成十九年、NHKラジオ「古典講読――漢詩」講師、平成二十年より同「漢詩をよむ」講師。
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