解説
『資本論』は我々を取り巻く世界、つまり資本主義社会の構造を解き明かした本だ。
著者のカール・マルクスが生きた時代は、産業革命の直後である。
彼はその産業革命のメッカと言えるイギリスで活動した。
産業革命による機械文明の発達は、生産性を飛躍的に向上させ、巨大な富を生み出したが、豊かになったのは一部の資本家だけで、大多数の人々は、資本家に雇われる貧乏な労働者として一生を送った。
マルクスは、資本主義システムで起こるこのような問題を、既存の経済学理論では説明できないと考えた。
そこで彼は、資本主義の仕組みを労働者の立場に立って科学的に分析し、原因を究明しようと考えたのだ。完成させた『資本論』が、世界中の指導者、思想家、労働者たちに多大なる影響を与えたのは言うまでもない。
では、その『資本論』を読むことで、あなたは何を得られるのだろうか?
「社会主義者」や「共産主義者」という言葉は聞いたことがあるが、「資本主義者」と名乗る人は見たことがない。それだけ我々は、自分を取り巻くシステムを意識することなく生活している。これはまるで、水の中に住んでいる魚のようだ。魚は水について理解していなくても、問題なく生きていけるかもしれない。しかし、水がどこから来るのか、水が汚染されているとしたら、その原因は何かを理解していれば、いざという時にどうすれば生き残れるのか、もっと良い水の中で生きるためにはどうすれば良いのか、対策を立てることができる。
執筆にあたっては、「もしマルクスが現代に蘇って、日本の読者に分かりやすいように『資本論』を書き直したら、どんな本にするだろうか?」と想像しながら、制作にあたった。論点を明確にできたので、初心者にとっては、この上なく理解し易い入門書になったと自負している。(「はじめに」より)
収録内容
1章 そもそも富とは何なのか?
2章 価値の交換がお金を動かす
3章 資本、それはお金を稼ぐお金
4章 労働力は労働者が売る商品である
5章 資本主義システムでの労働の構造
6章 人はどうして資本の奴隷になるか
7章 人はなぜ金持ちになれないのか?
8章 技術の発達が人を幸せにしない理由
9章 資本が雪だるま式に増える理由
10章 資本が巨大になるメカニズム
11章 資本主義は恐慌から逃れられない
許成準(ホ・ソンジュン)
ゲームクリエイター出身の投資家。2013年には韓国のセキュリティソリューション企業、株式会社アンラボの大株主のひとりだった。KAIST(旧称・国立韓国科学技術院)大学院卒(工学修士)。「Kingdom Under Fire」シリーズなどのゲームの企画・プログラミングに参加。様々なプロジェクトの経験から、組織作り・リーダーシップを研究するようになり、ビジネス・リーダーシップ関連の著作を多数執筆。主な著書に『超訳 孫子の兵法』『超訳 君主論―マキャベリに学ぶ帝王学―』『超訳 論語―孔子に学ぶ処世術―』『超訳 アランの幸福論』(いずれも彩図社刊)などがある。
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