天は自ら助くる者を助く
本オーディオブックは、1858年にイギリスで上梓された『自助論』の改訂版を現代語にて全文を完全新訳し、朗読したものである。
人は成功を命ずることはできない。努力してこそ、成功を手にすることができるのだ
前書は、アメリカで出版されたのを始め、イギリス国内はもちろん世界各国にて翻訳され、今尚、読み継がれるロングセラー書。
日本国内では、中村正直が翻訳『西国立志編』として刊行。明治の終わりまでに100万部以上の売上をあげた。
本オーディオブックは、全十三章からなる「自助論」の第八章
本書の主旨は、みなさんが正しい目的に向かって力いっぱい努力すること―、苦労や苦しみ、屈辱から逃れることも、他者からの支援や保護に頼りきることもなく、自分自身で活路を切り開けるように導くことだ。自分自身を助けることは、突き詰めて考えれば、周囲の人を助けることにつながる。
本書で取り上げたさまざまな実例――文学者や科学者、芸術家、発明家、教育家、慈善家、宣教師、殉教者たちの生き様―を見れば、それが分かるはずである。
優れた人物が、自らの理想を追求するなかで失敗することはもちろんある。しかし、失敗しようと思って失敗したわけでもなければ、失敗してよかったと考えているわけでもない。よからぬことを追求して成功するのは恥ずべきことだが、理想を追求して失敗するのは名誉なことである。
しかし、理想を追求して成功するほうがそれよりもっといい。
どんな場合でも一番大事なのは結果ではなく、その目的であり、価値ある目的の実現に向けて注ぐ努力と忍耐、勇気、不屈の闘志である。
目次
第8章 気概と勇気――ENERGY AND COURAGE
●気概こそ人を成長させる
●成功に導く意志の力
●非凡なる指導者たち
●背中で見せるネイピア将軍
●国民という英雄たち
●神の教えを人生を賭けて伝える宣教師たち
●慈愛に満ちた活動家ジョナス・ハンウェー
●人生をかけた戦い奴隷制度廃止
〜本文より抜粋〜
「勇ましき心に、不可なるものはない」
―――ジャック・クール(フランスの豪商で、シャルル7世の顧問官)
「幸運は勇者の上に微笑む」
―――ドイツのことわざ
「始めたすべての事業を……彼は心を尽くして進め、成し遂げた」
―――旧約聖書 歴代誌下 31章21節
何であれ、成功するのに必要なのは、人より秀でた才能よりもまず決意である。
能力だけあってもだめで、闘志を持って粘り強く努力する意志の強さが不可欠だ。
気概こそ人格の中心核となるもの、つまるところ人そのものと言っていい。
気概は行動に推進力を与え、努力に魂を与える。
真の希望は気概から生まれ、その希望が人生に豊かな彩りを与えてくれる。
何かを望んだり願ったりしているだけでは、欲求不満がたまるだけだ。直ちに具体的な行動に移す必要がある。
援軍が来るまでひたすらじっと待つだけという者は少なくないが、それでは何の役にも立たない。
ワーテルローの戦いでナポレオンを破ったウェリントン将軍のように、援軍を待つ間も勇敢に闘って持ちこたえる必要がある。
何か意味のあることをしようと決めたなら、素早くわき目をふらずに実行に移すべきなのだ。
長い人生には、退屈な仕事やつらい仕事をしなければならないときもある。そんなときは、自分を磨くチャンスと捉えて前向きに明るく取り組むべきだ。
フランスの画家アリ・シェフェールがこんなことを言っている。
「人生では、頭か身体を働かさなければ成果は得られない。努力して、努力して、さらに努力する。
それが人生というものだ。その意味で私は自分の人生に満足している。少しばかり自慢めくが、それを承知であえて言えば、何ものも私の勇気をくじくことはなかった。
強い気持ちと高い志さえあれば、人は望んだことを間違いなく実現できる」
努力することもほかの習慣と同じで、続けているうちに何の苦労もなくできるようになる。
平凡な能力しかない者でも、1度にひとつのことに集中して根気強く努力することによって、大きなことを成し遂げられる。
奴隷制度の廃止で功績をあげた政治家のファウエル・バクストンの信条は、「あたり前のことを全力で行う」というものだった。
彼は、聖書にある「すべてあなたの手の成し得ることは、力を尽くして成せ」という教えを忠実に実践した。
そして、自分が成功した理由は「1度にひとつのことに全力であたる」ようにしたからだと語っている 。
真に価値あることは、勇気ある挑戦なくしては達成できない。人間の成長はひとえに、困難に積極的に立ち向かおうとする意志の力、すなわち気概いかんにかかっている。
一見不可能に思えることが、意志の力によって可能になるケースは驚くほど多い。強く望みさえすれば、それだけで可能性は現実へと変わる。
強い願望は、いずれそれができるという自信へとつながることが多いのだ。
逆に、臆病で優柔不断な人間には何事も不可能に見え、それだけで実現を遠ざける。
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