内容紹介
百年間の隠蔽の闇から甦るときめきの濃密文学
入魂の作品、リアルな性愛描写は興奮さめやらぬ
不思議な性の桃源郷へ聴く者を誘い込んでしまう。
明治・大正・昭和の著名な作家や文人が名を秘して綴り
密かに出版され続けた幻の性文学と作者不明の伝説的
傑作艶書シリーズ・第三巻がオーディオブックで登場!
【1.むき玉子】
君子は今だに独身である。同性愛の相手である常子は要之肋と結婚し、友人の文子は三千雄と結婚していた。常子や文子の結婚を馬鹿にしていたのも最初の内、さすがに独り者の淋しさは如何ともしがたい。ある日、三千雄が所用のため君子の家を訪れた。君子が堅気育ちに似ぬ床上手と、文子から寝ものがたりに聞かされていた三千雄は、生来の好きごころを煽られて、いつか機会があればと君子を狙っていた。君子も君子で、閨淋しさに悶々の折から、男一匹、逃してならじと、悩ましげな目つきで三千雄をのぞきこんだ。君子の五体から発散する強烈な異性の肌の香りが三千雄の官能を悩ましくかき乱した…。君子とてもまた男性に遠ざかっていたので、その色欲は一層旺盛だった。そして一方、要之肋である。彼は過ぐる年の夏の一夜、鎌倉の山荘で仮初めの契りをかわした文子のことが思いきれず、文子が三千雄のもとへ嫁いだのちも、人目を避けて文子と忍び逢いを続けていた。ある日、旅行を口実に恋人の君子の家にしけ込んだ三千雄が留守の間、文子の家で要之肋と文子は灼きただれるような熱烈な情味を充分に味わい尽くしていた。…その時である。襖がガラリと開いて、一人の男が敷居に立った、それは文子の夫、三千雄であった。二人は吃驚仰天、あわてて飛び離れてその場に座り直そうとしたが、淫水と汗水まみれの素っ裸といった状態では隠しようがなかった。怒り心根に達した三千雄は体全体をわななき震わせた。一方は二十年来の莫逆の友。一方は最愛の恋女房。いずれを棄て、いずれを採るか、すぐには決断をつけかねた。と云ってこのままの黙認は、男子としての面子が立たぬ。三千雄は千々に思い乱れた末に、ふと名案が浮かんだ。要之肋と文子を許す条件とは、要之肋の妻、常子を三千雄に提供することであった…。かくして、四人は愛欲ただれた共同生活をすることになっていくのである。或る夜は四人同時の輪姦重姦、また或る夜は女一人に男二人、男一人に女二人と、見る目も綾な幾月幾夜は過ぎて行った。この世には、この様な夜の、美しくうらやましい絵巻が、今、この一瞬の時にも何処かの国のどこかの屋根の下で繰り広げられている事であろう。
【2.泥にあえぐ】
青春の血の沸き返る頃、愛し合った若き男女が、互いに其の恋を握り得た時の意中の満足と喜悦とは、人生一代の間に、嘗て他に比べ得るものはなかろう。が然しこれも永遠に平和を持ち得たならば、誠に幸福ではあるが、恋の曲者は、必ず那辺にか其の影を巧みにかくして、或る時期を窺いつつあるものである。立花敬一は25歳の時に、葉子を妻に娶った。葉子は県立高等女学校を卒業と同時に、敬一に対して大なる尊敬と深き愛着とを以て、敬一に愛撫されると云う興奮した期待を持って嫁いで来たのであった。敬一は此の光栄ある若々しい、穢れをしらぬ女性を受け入れる事の出来た楽しさと嬉しさは生涯忘れる事は出来なかったろう。然し乍ら其の悦楽を味わうと共に、或る黒影が彼の裏面に萌した。それは彼の汚れた前生活を呪わずには居られないからである。本能主義の不可思議な世界を予想しつつ、今、彼女は浪漫主義の春光に其の心を和らげられつつ、多くの期待を以て、処女から人妻としての第一歩を踏まんとしつつあるのだ。期待さるる幻の世界。之は多くの場合、結婚と共に滅するものである。敬一は自己の本能慾を満足させるばかりではなく、異性に対して持つ女の性能、あらゆる美しい観念を、充分に此の結婚生活に依って享楽し得らるるものと思いつめると、彼は呼吸のつまる様な、胸を圧しらるる様な一種の痛痒を覚えた。それほど葉子は純潔であり可憐であった。この尊き犠牲の前に、敬一の性的悪魔主義は如何なる態度をとったか?彼ははじめて浪漫主義の夢と、本能主義の血とを同時に持ちたいものだと思った。敬一は一気に葉子の処女膜を破りたくないと思った。自己の為に一歩々々処女が非処女になる段階を、出来るだけ長く楽しみたかった。そして一般の女の秘すべき事が夫婦と云う関係の為に、其の夫の思う通りに、しかも女の止ぬに止まれぬ許諾を以て、衣を一枚々々と剥がす様に、ある浅ましさを帯びて残りなく暴露されていくと云う、社会的又は公認的性慾的虐待に、名状すべからざる痛痒の感じを味わんと試みた。
【3.避暑地】
夏の天地の必然的な自由大胆な性は自然界の力に左右される。生物学的法則に支配される事によるのである。即ち、夏の天地は、あらゆる生物の産殖、即ち性慾の発展期であるからである。故に溌剌たる性現象が全土に満ちている。世界は自由である。富豪も、貧者も共に裸でひとえに一枚でどこへでも行かれる気楽この上もない時である。夏の世界は不変である。避暑地では、人々は元々楽しみに来ているのであるから、皆のびのびとした気持ちで平等な慰楽を感じている。併も皆共に一様な心を持っているのであるから、すぐに友達となり、共に楽しむと云う心理が働いている。そこで男女は忽ち肉体本質の道程に従って進んでいく事になる。即ち情慾の発展これ夏の天地の実相であると言う、本然的現象を呈してくるのである。人間も一個の生物、併も動物中に於いて鶏につぐ情慾の盛んな動物である。東京の人々は先ず海と言えば相州及び房州方面に行くのが普通である。特に房州は物価が比較的安いので学生達から好かれ、一般の人も年々多く行く。従って旅館は言う迄もなく満員、町々の人家も、皆貸間をしている。初めこそは見知らぬ男女客であるが、四、五日も過ぎれば、すっかり友達になってしまうものである。友達になった人がおたがいに性愛に入るならば敢てかれこれ云う必要もなく極めて自然な事であるが、それとは類を異にした現象があった。普通、男子が女子を引きつける様に言っているが、実は、女子が男子を誘惑する事のほうが遥かに多いのである。何となれば、女子が男子を誘引する術策をしなければ、男子は女子に目をつける道理は無いからである。女子が男女の性慾を誘惑する手は極めて容易である。
北条、館山は東京の避暑客で何処の宿屋も満員である。その中で一人の学生が一室に閉じ籠っていた…。暑中休暇になると間もなくその宿にきた彼は、十日余りにもなるので、今ではあり余る精力をたいくつに苦しんでいると云う風である。
【4.閨房】
『犬が食わずに蛤が食った話』思えばちょっとした夫婦喧嘩が、こんな大きな悲しい結果となったのです。前夜、夫が夜おそく帰ってきましたので、私がつい腹立ちまぎれに文句を云ったのが夫を怒らせ、あげくの果てが翌朝私の家出となったのでした。結婚して二年目にしての初めての夫婦喧嘩です…。
『処女への訣別』英吉は腕時計をしきりにのぞいていた。同じ勤め先の桃子と映画へ行く約束をしていた。互いに心が通じ合ってまる半年。その間、共に映画館、野球場、音楽会などへは行っても、それ以上のこともなく、恋愛ごっこで過ごしてきた。だが弱気な英吉といえど一個の男性である。(今日こそは…)いつもそう思いながら実行に移し得ない、その今日こそは……の決心に、又しても武者ぶるいする彼…。
『健全なる姦通』健太は従兄の晴三の家に同居し、勤め先のK食品会社へ、従兄と共に通勤していた。従兄の晴三は、三年前に貰った妻君との生活が、経済上にも不安はなく、妻・明子との仲も至極濃やかでなんの苦労もない幸福な男だと、健太はいつも羨ましく思うのであった。その晴三が、この頃帰宅が遅くなり始めたのである…。
『死の勝利』シーンと静まり返った山荘ホテルの深夜である。浩吉と昌子は邪恋を清算すべく、この山荘を最後の歓楽の一夜として選らんだのだった。思えば運命の悪戯とは云え、不倫の関係を結んで以来の愛欲の絆を断つには、死以外にない、と決心し、昌子に心中を迫ると彼女も浩吉と死の道を共に行くことに同意したのだ
った…。
※本商品は「幻作発禁 濃密文庫 第三巻」(ダイナミックセラーズ出版刊 青木信光著 ISBN:978-4-88493-305-0 525円(税込))をオーディオ化したものです。
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