【1.踊子の歌】
かつては清純な乙女だった塚田とし子。今は、ルミー塚田と名を変え、旅まわりの一座、ストリップ劇団“しらゆり”の舞台で25歳の肉体をさらしている。この一座は舞台のストリップだけで旅をまわっても座員の給料を払えない。小屋がはねてからのお座敷の収入が最大の収入源になっている。ルミーには、旅まわりのストリッパーに身を落とす前、商事会社に勤めていたときに、将来を誓い合った人がいた。その男、友近唯一郎にもう一度めぐり会い、そしてたった一度でいいから抱かれたい、それがルミーのはかない望みだった。彼女はお座敷がかかるたび、自分を呼んでくれる客が唯一郎ではないかと夢のようなことを考えて、今夜も足を運ぶのであった…。
【2.女体流転】
幸代は死んだ母親に似て色白く黒目がちの澄んだ瞳が大きく、受口が形よく調和した可愛い娘だった。母の一周忌が済んで間もなく、後妻となったリセは、むかし料亭の仲居をしていたという四十女で、虚栄心が強く結婚してからも浮気心を抑えがたく、父が留守の折など、若い男をひきいれて奥の部屋にとじこもっていることがしばしばあった。幸代が18の春、父がふとした風邪がもとで他界してしまう。それからというもの、義母のもとに出入りする男の数は日に日に増え、しかも堂々と泊まっていくようになった。月おくれの盆が済んだある日の夕方、駅前で旅館を経営する傍ら、市会議員の肩書きを振りまわす大山伝造という60歳にほど近いきつね面の男が彼女の家にやって来た。しばらくすると義母は出掛けてしまい、大山と幸代が家にのこされる。幸代は、何ともいい知れない不安を感じ、逃げ出す機会を窺っていたが、それより先に大山に抱きすくめられ押し倒されてしまう。義母はこのことを承知していると大山が言う。やがて幸代は大山の性の暴力に無残にも力尽きてしまう。そしてこの日を境に幸代の、控えめで娘らしい姿は消え、露悪的とさえ思えるほど開放的になっていく…。
【3.二つの花】
作三の家の離れに、女子大生の菊江と、事務員の多喜子が住むようになってから、もう半年になる。そしていつしか作三と多喜子は結ばれ、隣の菊江を警戒しつつ、しびれる様な肉慾のとりこになっていった。多喜子は丸顔の色の白い、男好きのする顔で、大きく張った乳、ぴちぴち弾む尻、すんなりのびた脚、そして抱くと火のような情熱で身体を燃やす女であった。菊江は、健康そうな二十歳の女体が全身にみなぎっており、ひねもす本など読んで勉学にいそしんでいるが、その張った乳の下の熱い血潮が何を求めているか、作三は一度かき乱してやりたいとかねがね思っていた。その夜も作三は多喜子の部屋へ向かった。そっと戸を開け部屋の中に入り、多喜子の布団の上にのしかかると、白い腕が伸びて、作三の首を抱くと激しく引き寄せた。むっとする女の匂いが鼻をつき、ふんわりした暖かさが快く作三の全身をくすぐる。一方、菊江は、前々から作三と多喜子のことに気づいていたが、そこは若い学生のこと、あからさまに云えず、かといって人知れず好奇心をそばだてて、いつかのぞき見をしていたが、その光景のあまりのすさまじさに、もはや菊江は身体のうずきを止められず…。
【4.初夜物語】
「もう今宵限りで20年の処女ともお別れかと思いますと、何とも云えない淋しさと、胸のふるえるような或る一種の恐れをも感じた事は事実でした…。」
道夫との結婚式を無事に終えた新子は、K県のU温泉に二泊三日の新婚旅行に出かけた。ふたりきりの世界…。全身汗水だらけ、ぶるぶる興奮で体をふるわせて、ベッドの上でけもののように何度も恥ずかしい行為をくり返し、女になった初めての夜の幸福にしみじみひたり明かした新子。
遠い夢の世界からゆり動かされるように、ふと目を覚ましたのは、夜明け前には程遠い時間。そっと身を起こし小用に立った新子。そこである誤解から、工夫のような男に言いがかりをつけられる。そしてそのままその男の部屋に連れていかれてしまう…。しかし新子はそこで、さらなる女の喜びに目覚めてしまうのであった。初夜の日、新子に訪れた悲劇は快楽の喜びに変わり、そして新婚旅行の期間中、その男と関係を続けることに。一方、道夫のほうは…。
【5.女獣の宿】
新宿駅前でぼんやり立っていると、五十がらみの貧相な男が声をかけてきた。秘密の面白い場所があるという。肉布団…。それも一人じゃなく、二人を相手にできるという。しかも素人の姉妹。姉のほうは21、2、妹のほうは17歳。だまされたつもりで一晩の浮気もよかろうと気軽に男の誘いにのってついて行く。三人同衾がはじまると、姉妹の凶暴な情熱が徐々に目覚めはじめていく。果てることのない彼女らの行為に私は精根尽き、ただ仰向いて一物を立てさしているのみで、彼女らは私の意思に関係なく、勝手に気をやり、勝手に興奮し、勝手に遊んでいるのである。少しでも一物の力が弱まると、二人してなめたり、さすったりして立てさせ、立てると争ってその上にのりかかるのであった…。私は結局、二匹の淫獣に捕まった羊のようなもので、ただ彼女らの為すがままであった。
【6.未亡人と犬と男】
復員後まもない修は、近隣に住む若くて美しい戦争未亡人、待子に心を奪われていた。未亡人は子供もなく、ただ一匹のセッター種の犬と生活して、その犬をはた目にも目立つほど可愛がっていた。或る日、修と待子がただならぬ仲に進展する機会がやって来る。修は昼食をすませて、二階へ上がって未亡人の家を見下ろした。磨き抜いたガラス窓からは未亡人の部屋の内部をはっきりとうかがうことができた。未亡人は上りがまちに腰をかけて犬とふざけているように見えた。瞳をこらしてみると…。修はあっと驚きと興奮で思わず息を止めた。未亡人はワンピースの裾を臍のあたりまであられもなくまくり上げ、そのむっちりした白い股の間にセッター種の大柄の犬が這入り込んで、こんもりと茂る黒い陰毛の森の下のあたりを長い大きいざらざらする舌で、ひっきりなしに舐め続けているのだ…。修は彼女の一部始終を見とどけて(あの虫も殺さぬ様な絶世の美人がこんなすさまじい秘密を持っているとは!)とあっけに取られたが、しかしこれを見たために未亡人は彼が考えるように高嶺の花ではなく、これなら積極的に出ても失敗しっこないと小躍りして喜んだ。そして修は彼女の家を訪れた。
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