作品紹介
鈴木三重吉は日本の児童文化運動の父として知られています。
彼は、政府が主導する唱歌や説話の質に不満を持ち、子供の感性を育むためには、本当に良い作品を届けなければならないという哲学のもとで、童話と童謡の雑誌「赤い鳥」を創刊しました。その創刊号には、芥川龍之介、有島武郎、泉鏡花、北原白秋らが賛同し、後には菊池寛や、谷崎潤一郎らも作品を寄稿しました。また、「赤い鳥」には多くの作家、作詞家、作曲家、画家が賛同し、参加したのみならず、彼らが世に出るきっかけとなりました。
三重吉自身も創作童話のみならず、世界各国の物語を児童向けの童話として、沢山の作品を発表しています。
このオーディオブックは、鈴木三重吉がお子様に対しても真剣に一人の人間として向き合って、千差万別の人間模様を描いた童話が収められたものです。是非親子で一緒に触れてみてはいかがでしょうか?
「日本を」(長編歴史童話)
江戸時代に鎖国を行い、オランダと中国以外の国とは交わりを絶ってきた日本ですが、イギリスやポルトガルに遅れを取っていたアメリカは、どうにかして日本と自由な交際がしたいと願っていました。
日本と友好関係を作るための実際上の問題を一番熱心に研究していたのは、代将官のペリーでした。
オランダと通商をしているということは、出方一つでは我々とも交際しないはずはないと考えたのです。
ついては、彼は順序として、日本は元来どういう訳で外国人との交際をあれほど極端に拒んでいたのか、その理由を知りたいと思いました。
まずは、これまでどんな国が日本と接していたのかを調べました。
その結果、色々な国が自国の利益だけで日本に接して悪い印象を与えていたことに気付きました。ゆえに我々は十分の礼儀と温情をもって徐々に接近し、我々に悪意が無いことをよく了解させれば目的はきっと達せられると信じたのです。
そして1852年、ペリーは大統領の命を受け、ミシシッピー号一隻だけで、日本に向かって出発したのです……
「お嫁くらべ」
お金持ちのお百姓のうちにはきれいな娘が三人いました。
中でも一番上の姉のクリスティナは器量も一番よく、賢かったのですが、剛情な怒りっぽいたちで、人の言うことは聞かないわ、二人の妹や召使はいじめるわという始末です。
ある時、クリスティナをお嫁にもらいたいという人が村にやって来ましたが、お百姓はうっかりもらってもらう訳にも行かないので、クリスティナの悪いところをすっかり話してしまうと、彼は結局代わりに二番目のマーガレットをお嫁にもらっていきました。
同様にして、末の妹のもガータもお嫁にもらわれて行き、クリスティナ一人が後に残りました。 クリスティナはへそを曲げてこれまでより一層家中の皆にひどく当たりました。
しかし、ようやくまた一人、クリスティナをお嫁にもらいたいという人が現れました。
クリスティナも自分一人が家に残るのが嫌でその話を受けて結婚が決まったのですが、どうもこのお婿さんは一癖も二癖もある人のようで……
収録作品
日本を(長編歴史童話)
お嫁くらべ
五色の玉子
お日さま
あわてもの
こねずみ
ハエがワニを殺した話
こま鳥
バカのこざる
からすのてがら
お人形
黒い小鳥
おばあさんとうさぎ
鈴木三重吉(すずき・みえきち)
小説家・童話作家。1882年、広島の生まれ。
東京帝国大学において夏目漱石に師事した後、その門下となる。短編小説「千鳥」を「ホトトギス」に発表して認められ、作家としてデビューした。
その後も浪漫的・抒情的な作品を書き注目を受けたが,しだいに童話への関心を深め1916年童話集「湖水の女」を出し、1918年、児童雑誌「赤い鳥」を創刊。坪田譲治、新美南吉らの童話作家を育てた。
代表作には小説「小鳥の巣」「桑の実」「世界童話集」など。
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