上方講談 古典怪談の世界
近年、注目を浴びている、日本の伝統話芸「講談」。
「冬は義士 夏はおばけで飯を喰い」と川柳に詠まれたほど、
講談師は夏になると怪談を語ってきている。
クーラーのなかった時代、観客は講談師の語る世界に身をゆだね、
背筋を凍らせ、暑い夏を忘れた。
講談師の旭堂南湖が贈る古典怪談。
故きを温ねて新しきを知る。
名調子で語る「日本の怪談」ここにあり。
内容紹介
佐倉義民伝・その四「将軍に直訴」(28分)
下総国、現在の千葉県。領主、堀田上野介が厳しき年貢、運上金を取り立てる。百姓たちはこらえきれず、ついに百姓一揆を起こした。そうして、年貢、運上金の改善を願い出たが、聞き入れてもらえない。そこで、公津、岩橋、二ヶ村の名主、木内宗五郎が佐倉領、二百二十九ヶ村、二万七千人のために、身命投げ売って将軍に直訴に及んだ。直訴の罪によって、宗五郎夫婦、子供らは、全員処刑され、刑場の露と消える。これらの人々の一念が亡霊となって現れ、領主、堀田上野介を始め、悪役人に祟りを致すという長い長いお話が佐倉義民伝。
さて、公津の旦那と民百姓に慕わている木内宗五郎がいよいよ将軍に直訴をする。
佐倉義民伝・その五「処刑場」(30分)
宗五郎親子を奉行所へ引き立てて参りました。高田源太夫が三軒の牢屋をこしらえて、中の牢へ宗五郎と三男三之助を入れ、右の牢へは長男宗平、次男源助を入れ、左の牢へ妻のおきんを入れた。姿が見えなければ仕方がないが、子供は両親が姿が見えるものだから、長男、次男は声をあげて、
「お父さんのところへやって下さいまし。お母さんのところへ行きたい」
と牢格子を掴んで地団駄を踏んでおります。
佐倉義民伝・その六「光善和尚の覚悟」(34分)
光善和尚が処刑場へやってきて、
「宗五郎。ああ、よくお仕置きになってくれる。領分の者、何万人という人に代わり、江戸表へ出て将軍家のお袖にすがり直訴。領分の者が枕を高く眠ることができるのも、宗五郎の働きによるところ。この光善が弔って遣わす故、よく往生いたせ」
佐倉義民伝・その七「犬死の宗五郎」(26分)
木内宗五郎が、将軍に直訴を致しまして、その罪によって、宗五郎夫婦、子供三人は処刑された。これで年貢、運上金の取り立てが無くなったかと思えば、そうではない。郡奉行、高田源太夫が悪いやつで、取り立てが以前よりも厳しくなり、百姓小前の衆は、朝から晩まで汗水たらして、働いている。悪役人だけが安楽に暮らして、うまい汁をすすっている。宗五郎の叔父、千葉村の忠蔵も、宗五郎が将軍家に直訴をしたとき、一緒に訴えをしたので、領分追放となった。顔を隠して、久しぶりに、故郷へ戻ってまいります。百姓、小前の衆が苦しんでいる。これでは宗五郎は犬死に同様である。
旭堂 南湖(きょくどう なんこ) プロフィール
講談師。
1973年生まれ。
滋賀県出身。
大阪芸術大学大学院修士課程修了。
1999年、三代目旭堂南陵(無形文化財保持者・2005年死去)に入門。
2003年、大阪舞台芸術新人賞受賞。
2010年、文化庁芸術祭新人賞受賞。
2015年、『映画 講談・難波戦記-真田幸村 紅蓮の猛将-』全国ロードショー。主演作品。
2019年、CD「上方講談シリーズ4 旭堂南湖」発売。「血染の太鼓 広島商業と作新学院」「太閤記より 明智光秀の奮戦」収録。
2021年、『旭堂南湖講談全集』(レベル)発売。
2021年、滋賀県文化奨励賞受賞。
2023年、『滋賀怪談 近江奇譚』(竹書房怪談文庫)発売。
2024年、『上方講談という愉しみ』(寿郎社)発売。
ZOOMを使った「オンライン講談教室」も好評。
講談や怪談の語り方をマン・ツー・マンで懇切丁寧に指導し、普及に努めている。
講談師・旭堂南湖公式サイト https://nanko.amebaownd.com/
X https://x.com/nanko_kyokudou
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