市朗妖怪百科とは
実話系怪談を語る怪談師や作家、タレントが増えている。
語り手も聞き手も、怪異だの幽霊だのを本気で信じているのかどうかは解らないが、古来より日本人はこういった怪談を楽しむ遺伝子を持っているらしい。
しかし、そんな中で、狐狸に化かされたり、河童や天狗に遭遇した、巨龍を見たという話があったとしたら、どう思れるだろうか?
幽霊は人が死んで成仏できなかったもの。それは百歩譲って理解したとして、妖怪なんてこの現代社会にいるわけがない。そう思われるだろう。
だが一方で、そんな現代の妖怪遭遇談が、私の元には集まってきている。そんな妖怪譚をまとめ、お聞かせすることにしたい。
同時に、古文献や伝承に現れた妖怪たちと比較、関連付けながら、わが日本に今も棲みつく妖怪たちを紹介しようと試みるものである。
内容紹介
『人をたぶらかす現代の狐狸』
日本人は長らく狐狸に騙され、化かされてきた。そしてそれは現代も進行中である。
怪異蒐集家・中山市朗が集めた怪異談の中から特に狐狸に関するものをピックアップして語る、古今東西の化かされ話、第三弾!!
「前説」(3分)
『妖怪百科』の第二、第三集ではそれぞれにキツネ、タヌキを取り上げて、その化かすメカニズムと共に現代の狐狸妖怪について語ったみた。
今回はそこに紹介しきれなかった狐狸に関する不思議で奇妙なお話について、語らせてもらう。その趣旨と意図。
「ボンネット」(4分)
大学生二人が滋賀県に遊びに行った帰りのこと。京都に向かって車を走らせていると、二人ともこの車が大きな外車のように思えてきた。いったいこれは?
「長い塀」(6分)
外回りから帰って来た営業の若い男。いきなり上司に「狐って人を騙すって本当ですよ」と言い出した。ついさっき車での帰り、奇妙なことがあったという。
「花嫁」(7分)
ある人の子供の頃の話。馬を連れて帰って来た祖父が「お客さんだよ」と言う。玄関に出てみると狐が荒縄で馬に括りつけられていた。理由を聞くと、帰りの道で金襴緞子の花嫁さんが道端に立っていて…。
「甲山墓園」(3分)
ある大学生が甲山墓園で肝試しをしていたら、真夜中の墓園の中に走るタクシーを見たという。そんなものが走れる道は無い。しかし彼が言うには…?
「エキスポランド」(5分)
大阪のエキスポランドへ遊びに行った一家三人。帰りの車に乗り込んだところ、前を一台のセダンが走っていて、これを抜くことが出来ない。いや、車間がずっと一定なのだ。そしてそのまま自宅のある町内まで続き、なんと最後に。
「あいさつ」(3分)
ある人の幼い頃、田舎道を祖父と歩いていると顔見知りのおじさんとすれ違った。お互い挨拶する。ところがまた同じ人とすれ違う。そして三度目、祖父はある行動に出た。すると同時にそのおじさんも…。
「祝言の帰り」(9分)
随分と昔のこと。ある男が隣町の祝い事に出た。その帰りのこと。闇の山道を歩いていると知り合いの若い女が明かりも持たずにこっちへ歩いてくる。「あれは狐かもしれん」。男は一計を案じる。狐狸に騙された時の対処法。
「二つの月が出る山」(4分)
ある人は、子供の頃に田舎に住んでいて小学校の帰りは集団下校で山道を歩いたという。たまに遅くなると日の暮れた森に、二つ目のお月さんが出ることがあったという。それが出ると子供たちはこれは狸の仕業だと知った上で、ある行動をとっていたという。
「大男」(5分)
ある人の実家の裏に山があった。それほど深い山ではないが子供の頃、その山を越えたらあり得ない場所に着いたという。しかもそこに雲を付く巨人がいて名前を呼ばれたのだ。
「夏の海」(6分)
郵便配達をしているある男性。真冬の海沿いの道路を自転車で通っていた。寒い風が身を切る。しかし彼は海を見ていて急に泳ぎたくなったという。そういえばなんだか暑い。そんな感覚。そして彼は裸になると海へと駆け出した。
「タヌキの剥製」(5分)
ある一家がご先祖の墓参りをした帰り道。見たことも無い道に入り込んでしまい、その先で石壇の上にタヌキの死骸が横たわっているのを見た。目をつむって手を合わせるとそれは二つに増えた。死骸ではなくはく製のようだ。しかしなぜ増えたのか? 同じことをすると三つになった。もう一度目をつむると。
「キツネ」(3分)
あるうどん屋さん。このお店には定番のキツネうどんがメニューにない。その理由はかつてキツネに関するある事件があったからだ。まさにキツネが家人に取り憑いたという話。
「動物に憑かれる話は外国にもある」(15分)
日本人には古来より狐狸に騙され化かされて、文学や芸能にも描写されてきたが、諸外国にはそういう事例はあるのだろうか?そのあたりのことを考察してみる。
「今昔物語から」(23分)
古来の人たちは、狐狸に対してどういう感覚を持ち、どんな体験をしたのだろう? 平安時代後期に編纂された『今昔物語』から二話抜粋して紹介する。今にも通じる典型的なこんな話。
「キツネのバス」(2分)
ある地方のバス停留所。黄昏時にある女性がバスを待っているところに現れた一台のバス。しかしまだ時間は早いし何か違和感がある。近くまで来た時、違和感の正体が明らかになる。運転手のいないバス…。
「音の電車」(2分)
ある女性が駅で電車を待っていた。こちらのホームもあちらのホームも人がびっしり。そこへ電車がやって来た。みんなはその電車に乗ろうとするが、電車の姿はなく、ただ…。
「一休さん」(9分)
ある保険会社が顧客のガソリンスタンドで奇妙な報告書を目にする。お客さんからの何件かの苦情。軽油スタンドのところに一休さんがいるが、あれはなんなんだ、というもの。従業員に聞くと見たことがあるという。
寺の小坊主の恰好をした何かが確かにいて、ノズルを舐めているという。さっそく調査に入った。
中山 市朗(なかやま いちろう) プロフィール
作家、怪異収集家
1982年、大阪芸術大学映像計画学科卒業。映画の助監督や黒澤明監督の『乱』のメイキングの演出などに携わる。
1990年、扶桑社から木原浩勝との共著で『新耳袋〜あなたの隣の怖い話』で作家デビュー。『新耳袋』はそれまでただ怪談で括られていたものから、実話だけにこだわり百物語を一冊の著書で実現化させた。
『新耳袋』は後にメディアファクトリーより全十夜のシリーズとなり復刊。『怪談新耳袋』として映画やドラマ、コミックとして展開。
Jホラーブームを作った作家や映画監督に大きな影響を与え、ブームをけん引することになる。
著書に『怪異異聞録・なまなりさん』『怪談実話系』『怪談狩り』シリーズなどがある。
怪談は語ることが重要と、ライブや怪談会、放送などでも積極的に怪談語りを行っている。その他の著書に『捜聖記』『聖徳太子・四天王寺の暗号』『聖徳太子の「未来記」とイルミナティ」など多数。
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