市朗妖怪百科とは
実話系怪談を語る怪談師や作家、タレントが増えている。
語り手も聞き手も、怪異だの幽霊だのを本気で信じているのかどうかは解らないが、古来より日本人はこういった怪談を楽しむ遺伝子を持っているらしい。
しかし、そんな中で、狐狸に化かされたり、河童や天狗に遭遇した、巨龍を見たという話があったとしたら、どう思れるだろうか?
幽霊は人が死んで成仏できなかったもの。それは百歩譲って理解したとして、妖怪なんてこの現代社会にいるわけがない。そう思われるだろう。
だが一方で、そんな現代の妖怪遭遇談が、私の元には集まってきている。そんな妖怪譚をまとめ、お聞かせすることにしたい。
同時に、古文献や伝承に現れた妖怪たちと比較、関連付けながら、わが日本に今も棲みつく妖怪たちを紹介しようと試みるものである。
内容紹介
『市朗妖怪百科 第八集 〜今も天空を飛翔する天狗の話〜』
天狗の伝承はずいぶん昔から存在している。今、イメージされる天狗は、赤顔に鼻高、額に頭巾、修験者の服装、高下駄、手に葉団扇。
背に羽根を持ち天を飛翔するものもある。しかし、大抵はその姿を現さず山の超自然現象と結びつくことが多い。
その正体は、神か妖怪か霊的ななにかなのか、それとも異国人か修験の者か。
そんな天狗と今のこの時代に接触を持った人がいる。姿を見、写真やテレビカメラに撮られたという例もある。
古来より解釈され伝承されてきた天狗を考察しながら、現代に現れた天狗について語ってみよう。
「天狗を見た人」(3分)
東北に取材に赴いた雑誌記者。ある村で手に手に竹竿や箒、鉄砲を持った村人たちの集団に出くわした。何事かと聞くと…。
「山の大天狗(だいてんぐ)」(7分)
ある人が親類のお寺に行き、住職と話をしていると「今晩うちに天狗が来ますぞ」と言う。「ほんとですか?」と聞くと「じゃあ今晩泊っていくがいい」と言われて泊ることにした。真夜中…。
「ブラックバス」(4分)
四国の田舎に転勤したYさん。近所の子供たちと遊んでいると畑の中にブラックバスが落ちて来た。子供たちはそれをバケツに入れて「天狗が落としていった」という。そういえば近くにあるお寺では…。
「天狗とは何か」(24分)
日本のよく知られた妖怪、天狗。しかし天狗とは一体何だろう? 修験の人? 山の自然現象? 異界のモノ? それとも神? まずは文献をあたりながらそのルーツを探る。
「山の畑」(11分)
ある会社の営業をしている男性。名古屋から新潟への出張を命じられ車で出かけた。途中ある山道にさしかかった所でガス欠となってしまった。携帯のない頃のこと。周りに人気もなく、ただ小さな畑があった。ところがこの畑にはなんとなく違和感が漂ていて…。
「修験者と天狗」(5分)
天狗と言えば、寺や神社に祀られ修験者の姿にも似る。山の信仰と関係があるようだが、柳田国男氏などの民俗学者たちは、いろいろな見解を試みている。それらの説を解説する。
「熊野の天狗」(3分)
ある女性が中学生の頃のこと。母親と話していると部屋の中に突風が吹いた。すると母は「天狗さんに呼ばれた。行かなあかん」と身支度をはじめた。「どこに行くの?」と訊くと…。
「天狗の写真」(9分)
その男性の父親は若い頃から修験者としての修練をしているという。山での厳しい修行の最中、天狗と遭遇するのだという。「親父、嘘言うなや」と言うと、証拠の写真を見せられ…。
「狗の顔(いぬのかお)」(2分)
とある中年夫婦が四十八カ所巡りをした。ある山の祠に手を併せて帰ろうとすると、急に霧が出て目の前が真っ白になる。ところがその霧の中から、顔が出て来たのだ。
「富士山の天狗」(11分)
『新耳袋』の最初の出版会議。この時編集のKさんから奇妙な写真を見せられた。雪原に手の跡が一つ。富士の二号めで撮られたものらしい。この時、実に不思議な現象があったという。
「六甲山の天狗」(6分)
ある人が少年の頃、ボーイスカウトのテストを受けた。六甲山のある場所にテントを張って一人で朝まで過ごすものだった。ところが真夜中、何者かがテントに近づいて来て…。
「神隠しの伝説」(8分)
昔から、人が突然いなくなる現象を神隠しと言った。原因はいろいろあるが中にはほんとうに不可解な現象もみられる。天狗にさらわれた、とされる事件を例に出して解説する。
「太郎馬鹿」(7分)
昭和の初めの頃の話である。九州のある村に太郎という少年がいた。ある日から彼はあぜ道に立って、空を見上げる毎日を続けるようになった。村人たちが理由を訊くと「金人が現れて、落ちてくるものを受け取れ」と言われたという。そしてある日の事…。
「天狗神社」(5分)
若者三人が、神隠しがあるという深夜の神社に入った。そして実際に見たのである。人がまさに消える、その瞬間を!!
「京の天狗」(11分)
中山市朗の体験。あるテレビ番組の取材で夜の京都にある山中でロケを行った。この時、頭の上で突風が舞い、何かが空中を移動した。ポラロイドカメラでそれを撮ると、奇妙な人物が写っていた。スタッフもそれを確認した。それはまさしく、朧ながらも修験者の格好をした…。
中山 市朗(なかやま いちろう) プロフィール
作家、怪異収集家
1982年、大阪芸術大学映像計画学科卒業。映画の助監督や黒澤明監督の『乱』のメイキングの演出などに携わる。
1990年、扶桑社から木原浩勝との共著で『新耳袋〜あなたの隣の怖い話』で作家デビュー。『新耳袋』はそれまでただ怪談で括られていたものから、実話だけにこだわり百物語を一冊の著書で実現化させた。
『新耳袋』は後にメディアファクトリーより全十夜のシリーズとなり復刊。『怪談新耳袋』として映画やドラマ、コミックとして展開。
Jホラーブームを作った作家や映画監督に大きな影響を与え、ブームをけん引することになる。
著書に『怪異異聞録・なまなりさん』『怪談実話系』『怪談狩り』シリーズなどがある。
怪談は語ることが重要と、ライブや怪談会、放送などでも積極的に怪談語りを行っている。その他の著書に『捜聖記』『聖徳太子・四天王寺の暗号』『聖徳太子の「未来記」とイルミナティ」など多数。
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