内容紹介
妾こと美少女エラ子は、神戸海岸通りのレストラン・エイシャの隅っこに腰掛けていた。
油気のない前髪、紫ミラネーゼの派手な振袖。金ピカの塩瀬を色気よく背負っており、男の目には、十四五にしかうつらない。
妾の手にはボーイが買ってきた号外が一枚載っている。数時間前に起きた事件の活字を拾い読みしていた。すると妾は思わず吹き出してしまった。
ゲラゲラと笑っていると周りの西洋人や日本人が一気に妾に振り向いた。実は、妾がこの事件の犯人で疑問の少女・エラ子であることは誰一人気づいていない。
ポカンとしている周りを見回している内に愉快になった妾は、黄色い声を出して帳場の男にレターペーパーと鉛筆を頼んだ。
すぐに、持ってきてもらうと一気にペンを走らせ、事件の真相を置き手紙として置いておくことにした。
妾は神戸がつくづく嫌になっており、友達になってみたいと想う人が一人もいないことが分かった。
しかし、このレストランに来たら号外を見つけてしまい、つい持ち前のイタズラ気を出してしまったのだ。
財界のムッソリニと呼ばれる赤岩権六が粉砕され、インド人のハラムという男が射殺されていたこの事件。犯人であるエラ子自身によって、事件の真相が語られていく。
夢野久作(ゆめの・きゅうさく)
日本の小説家、SF作家、探偵小説家、幻想文学作家。 1889年(明治22年)1月4日 - 1936年(昭和11年)3月11日。
他の筆名に海若藍平、香倶土三鳥など。現在では、夢久、夢Qなどと呼ばれることもある。福岡県福岡市出身。日本探偵小説三大奇書の一つに数えられる畢生の奇書『ドグラ・マグラ』をはじめ、怪奇色と幻想性の色濃い作風で名高い。またホラー的な作品もある。
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