お餅がわりにお尻をぺったん(落語随談付き)
【あらすじ】
きょうは大晦日。しかし貧乏な夫婦は餅をつくことさえできず、これではご近所に顔向けできません。そこで亭主はもちつきのまね事をして「あの家は景気が良い」と周囲に思わせようと考えました。「どちらさま」「餅屋です」と大声で餅屋のふりをして家に入った亭主。親方と若い衆二人を演じ分け、さらには鼻紙をご祝儀に見立てて配ったり、水を酒と称してふるまったりと、なかなかに細かい芝居をみせます。そしていよいよもちつき本番。亭主は女房の着物をまくり、おおきな尻を臼に見立てて餅をこねはじめました。嫌がる女房ですが亭主は容赦せず、ついにはぺったんぺったんと女房の尻を叩きはじめます。こうして白い尻が赤くなったころ、ようやく一臼目の餅がつき上がったのでした。
【聴きどころ】
亭主は餅屋の親方と若いものふたり、さらには自分自身の四役を使い分けての名演技を披露します。もちろん扇遊師はそれに加えて女房(と臼?)も演じていて、つごう五人の男女がひとところにあつまって餅つきをするわけですから、たいそうにぎやかな噺となっています。さらにクライマックスではぺったんぺったんと餅つきアクションも加わって、口もからだも大忙しの一席です。
【もうひと言】
ふくよかな女房の尻をめくってぺたんぺたんと叩くくだりには、滑稽さの中にもあっけらかんとしたエロティシズムが漂っています。また元話である十返舎一九の小咄本『臍繰金』のなかの「もちつき」は医者が下男の尻を叩く内容で、こちらの話はどこか男色を思わせます。
[収録:2008年1月28日 池袋演芸場(東京)]
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