内容紹介
- 人は悲しいから泣くのではない。泣くから悲しいのだ-。
プラグマティズムやアメリカ心理学の祖として知られ、数々の名言を残したウィリアム・ジェイムズのことばの意味やその思想をわかりやすく紹介する。
収録内容
はじめに
第一章 世界をどう眺めるか―ジェイムズの哲学的ヴィジョン
1 哲学は一人の人間のヴィジョンである
2 哲学は凝り固まった偏見を打ち破る
3 真理への望ましい態度
4 「真なるもの」とは考え方における都合の良いもの
5 幸福であることと役に立つこととは必ずしも一致しない
6 ひとつの宇宙のなかの多宇宙
7 生はたえざる推移のなかにある
8 直接的な生の流れとしての純粋経験
9 世界の原初的な素材としての純粋経験
コラム1 ジェイムズが生きた時代と米国社会
第二章 世界のなかの「私」―「心」を哲学する
10 意識は流れるもの
11 自然とは過剰を表す名前にほかならない
12 人間を動物から区別するのはその主観的性癖の豊かさ
13 最も完全な意味での実在としてのプライベートな現象
14 合理主義が説明できる領域は比較的表面的な部分だけ
15 人間の心が持つ最もありふれた欠点
16 理論化しようとする心が持つ単純化しすぎる傾向
17 恋の相手は恋する者の心につねに影響を与えている
コラム2 ジェイムズの前半生とハーヴァード大学
第三章 宗教的なるもの―ジェイムズの宗教哲学
18 以前の世俗的自己とは決定的に違った存在となること
19 宗教的生活は人類の最も重要な営み
20 「宗教」が意味するもの
21 悪は人々がその現象を見る見方によって存在する
22 通常の目覚めているときの意識はひとつの特殊なかたち
23 宗教的状態には独自の価値がある
24 科学と宗教はどちらも世界という宝物庫を開く真の鍵
25 心霊研究は科学と宗教の架け橋1
コラム3 ジェイムズの後半生とその後の学問的環境
第四章 心のからくり―「科学としての心理学」を目指して
26 泣くから悲しいのであって悲しいから泣くのではない
27 あたかも本当に勇敢であるかのように行為せよ
28 われわれは年ごとにものごとを新しい光のもとで見る
29 意識の流れは心のなかをのぞくことで理解できるものか
30 感情を動かす刺激への感受性が人によって異なること
31 新しい知識を以前から存在する好奇心に編み込むこと
第五章 私たちは何になりうるか―教育観・人間形成論
32 活動的統一体としての児童の精神生活
33 児童に関する直観的で同時に分析的な完全な知識
34 心理学は科学(サイエンス)であり教えることは技術(アート)である
35 教育の本質は連合の傾向を児童のなかに組織化すること
36 あらゆる社会改善は対抗心の感じによるところが大きい
37 子どもが身の周りの物をいじくることの意味
38 つめ込むことで心の構造に織り込まれることはない
39 人生において大切なのは一緒になって作用する心の全体
40 心のしめがねをゆるめて自由にさせてやること
コラム4 ヘンリーの小説、ウィルキーとボブの事業、アリスの日記
第六章 この「私」はどう生きればよいか―生き方・道徳の思想��
41 自分独自の仕方で問題を見つめそれらを処理せよ
42 真理は必要や能力にぴったり適合するものではない
43 われわれは始終自分たちの一身を賭けている
44 今日手に入れられる真理で今日を生きなければならない
45 頭のよい人とは最もよく適合する名称を見つけられる人
46 望ましい状態は信じなければそもそも到来しえない
47 人生は生き甲斐があるものだと信じよ
コラム5 漱石と大拙、それぞれにとってのジェイムズ体験
第七章 他者とともに社会を生きる―生き方・道徳の思想��
48 傍観者の判断はものごとの根本を見落し真相を逸する
49 「熱情」こそが生活を意義深いものにする
50 内なる意義を洞察する一段と高級な視力
51 生命が存在すると同時に一歩離れたところに死が存在する
52 人はみな特別な相手のなかにさまざまな魅力や美点を見る
53 英雄的なものは身の周りの至るところに存在している
54 各人の幸福や不幸や意義は最も重大なひとつの神秘
55 信仰はわれわれの心の生得権として残り続ける
56 道徳という見地から見ると人生はひとつの戦いである
特別寄稿 ジェイムズとF・C・S・シラーの「ヒューマニズム」の哲学
おわりに
著者紹介
岸本 智典（きしもと とものり）
1984 年生まれ。米国教育思想史。慶應義塾大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得退学。作新学院大学女子短期大学部専任講師を経て、現在、昭和音楽大学専任講師、千葉大学非常勤講師、埼玉大学非常勤講師。共著に『西洋教育思想史』（眞壁宏幹編、慶應義塾大学出版会、2016 年）、『ワークで学ぶ教職概論』（井藤元編、ナカニシヤ出版、2017 年）、『ワークで学ぶ教育課程論』（尾崎博美＋井藤元編、ナカニシヤ出版、2018 年）など。論文に「W. ジェイムズ教育論における「注意の持続」の意味」（『日本デューイ学会紀要』第58 号、日本デューイ学会、2017 年）など。
入江 哲朗（いりえ てつろう）
1988 年生まれ。米国思想 史、映画批評。東京大学大学院博士後期課程。
共著に『オーバー・ザ・シネマ 映画「超」討議』（石岡良治＋三浦哲哉編、フィルムアート社、2018 年）、『映画監督、北野武。』（フィルムアート社、2017 年）、『論集 蓮實重彦』（工藤庸子編、羽鳥書店、2016 年）。論文に「ジョージ・サンタヤナとアメリカ文化―あるいは「お上品な伝統」と反知性主義」（『ユリイカ』2017 年1 月号）、「タトゥイーンの太陽と火星の大地―SF 映画における風景の発見」（同誌2016 年1 月号）、「健さんとシュワちゃん―活劇の臨界を走る」（同誌2015 年2 月号）など。
岩下 弘史（いわした ひろふみ）
1986 年生まれ。比較文学。東京大学大学院博士後期課程。論文に「夏目漱石とウィリアム・ジェイムズ―『文学論』の(F+f) について」（『文学』第15 巻第5 号、岩波書店、2014 年）、「夏目漱石とウィリアム・ジェイムズ―『文学論』の「印象又は観念」という用語をめぐって」（『比較文学』第56 号、日本比較文学会、2014 年）など。
大厩 諒（おおまや りょう）
1983 年生まれ。世紀転換期を中心とする英米哲学史。中央大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士（哲学）。現在、中央大学兼任講師、実践女子大学非常勤講師、立正大学非常勤講師。共訳にラッセル・B・グッドマン『ウィトゲンシュタインとウィリアム・ジェイムズ―プラグマティズムの水脈』（岩波書店、2017 年）。論文に「純粋経験の統一的解釈の試み―ジェイムズ哲学の方法論的考察を通して」（『哲学』第67 号、日本哲学会、2016 年）など。
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343分 66ファイル 2022年12月発売
