内容紹介
一念寺の自念和尚は、出家の身ながらうっかりするとついやくざな気持ちが暴れ出してしまう。困っている人の身の上を聞き、筋の通らぬ話には我慢ならない。悪いやつらにはお経より脇差にものを言わせるほうが早いのだ……!
檀家も参詣人も少ない貧乏な破寺に、半年前から一人の僧が住んでいる。名は自念和尚。網代笠を深くかぶり、誰も顔を見た者がいない。そのうえばくちを打つし、身のこなしに隙がない。ある日、定吉という傷ついた若者を助ける。わけを聞くと、兄の吉之助がやくざの甚八に殺され、その仇打ちに協力してくれた兄の友・辰次郎までもが命を落としたという。こうなると黙っていられない自念和尚。数珠を竹槍に持ちかえ、やくざとの戦いに受けて立つ。
山本周五郎(やまもと・しゅうごろ)
1903〜67年。小説家。山梨の生まれ。本名・清水三十六(さとむ)。名は生まれ年からつけられ、筆名は東京で徒弟として住み込んだ質屋「山本周五郎商店」にちなんだ。20代前半に作家活動を始め、39歳の時『日本婦道記』が直木賞に推されたが受賞辞退。その後も多くの賞を固辞する。江戸の庶民を描いた人情ものから歴史長編まで作品は数多い。代表作には、「樅(もみ)ノ木は残った」「赤ひげ診療譚」「おさん」「青べか物語」「さぶ」などがある。1987年9月には、「山本周五郎賞」が新潮文芸振興会により設定された。
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