内容紹介
数々の縁談を断り、富と名声のある老人・三右衛門に嫁いだ千鶴。その美貌と玉の輿で“驕れる孔雀”とかげ口をたたかれるが、素知らぬ顔で耐える。わかりやすい表面に覆い隠されてしまう千鶴の本当の気持ちとは。
千鶴は両親を早くに亡くし、伊予守正右の側室・恵光院の侍女として育った。美貌と利発さときかぬ気で恵光院に可愛がられた。恵光院は婿選びに心を砕くが、千鶴は縁談を断り続ける。ある日、嫁ぎたい人がいると明かす。相手は筆頭家老で二千石の富をもつ、親子ほど歳の離れた虫明三右衛門。周りの人はもちろん、三右衛門までもが富と名声のための結婚だと思っている。女中たちのかげ口に耐え、夫に献身的に仕えながら千鶴が秘めていた思いが明らかになる。
山本周五郎(やまもと・しゅうごろ)
1903〜67年。小説家。山梨の生まれ。本名・清水三十六(さとむ)。名は生まれ年からつけられ、筆名は東京で徒弟として住み込んだ質屋「山本周五郎商店」にちなんだ。20代前半に作家活動を始め、39歳の時『日本婦道記』が直木賞に推されたが受賞辞退。その後も多くの賞を固辞する。江戸の庶民を描いた人情ものから歴史長編まで作品は数多い。代表作には、「樅(もみ)ノ木は残った」「赤ひげ診療譚」「おさん」「青べか物語」「さぶ」などがある。1987年9月には、「山本周五郎賞」が新潮文芸振興会により設定された。
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